俺が消防の頃の話。
一年生の頃は登下校は毎日姉ちゃんとしていたんだが、その日は姉ちゃんがクラブかなんかで一緒に帰れず、二年生に上がって初めて一人で下校する事になった。
学校を出たのは昼間の二時か三時くらい。
でも梅雨真っ直中だったので今にも降り出しそうな程曇ってて、昼間とは思えないくらい暗かった。
「絶対寄り道しちゃ駄目だよ」と姉ちゃんに念を押された俺は、言われた通り真っ直ぐ帰っていた。
でも、遊歩道を抜けると木に囲まれた古い神社あるんだけど、普段は全然気にもしない神社がその日はなぜか無性に気になって中に入ってしまった。
さっきも言った通り神社は木に囲まれているし、曇りまくっていたのもあって物凄く暗かったんだが、なぜか全然恐怖を感じず一人で鐘をならしたりして遊んでいた。
しばらくしてウロウロするのも飽きたので、俺は神社の階段に座って地面に木の棒で絵を書いていた。
すると前から誰かが近付いて来るのが分かった。
足はヨボヨボで細くって雪駄か草履みたいなのを履いてて、白い服を着たおじいさんみたいな人だ。
でも顔は見てない。
とゆうか俺の頭は下を向いて絵を書いていた状態で動かなかったのだ。
でもその時はなぜか変だなぁとは思わなかったんだよな。
そんでそのおじいさんみたいな人は俺の前で立ち止まって、「お家に帰りんさい。帰りんさい。」と言うのだ。
それで、ちゃんとは覚えてないんだけど、確か気付いた時にはもうその人はいなくて、体もちゃんと動くようになっていた。
俺はその出来事を特に不思議に思わず家に帰った。
家に着いて俺は普通にいつも通りゲームをしていたんだけど、しばらくすると外から物凄い雨音が聞こえてきた。
窓の外を見ると、滝のごとく雨が降っていた。
俺はなぜかさっきのおじいさんに傘を持って行こうと思い、母さんにバレないように傘を二本持って神社へ向かった。
そして神社の階段の所に着いてしばらく待っていたんだけどなかなか現れないから、賽銭箱の所に傘を立て掛けて帰ろうとしたその時後ろから、「ええ子じゃ~坊主ええ子じゃ~」とさっきのおじいさんの声が聞こえた。
そっからよく覚えてないんだけど家に帰ったら母さんに怒られまくった記憶がある。
その後その神社に行ってもおじいさんに会う事はなくなった。
でもあの日おじいさんに持って行った傘はなぜかちゃんと返ってきていて、今でも実家に置いてある。