師匠シリーズ 第105話 風の行方 後編
それから僕らは、師匠の感じ取る風の向かう先を追い続けた。 それは本当の意味で、目に見えない迷路だった。 「あっち」「こっち」と師匠が指さす先にひたすら自転車のハンドルを向け続けたが、駅前の大通りを...
洒落にならない怖い話・ゾッとする話・オカルト
それから僕らは、師匠の感じ取る風の向かう先を追い続けた。 それは本当の意味で、目に見えない迷路だった。 「あっち」「こっち」と師匠が指さす先にひたすら自転車のハンドルを向け続けたが、駅前の大通りを...
師匠から聞いた話だ。 大学二回生の夏。風の強い日のことだった。 家にいる時から窓ガラスがしきりにガタガタと揺れていて、嵐にでもなるのかと何度も外を見たが、空は晴れていた。 変な天気だな。そう...
『浦井さんはいますか』 ゾクッとした。 あの女の子の声。 思わず「はい」と返事をしてしまった。 『次のカードはなんですか?』 次のカード? 透視ゲームがまだ続いているのか。 しかし様子がお...
師匠から聞いた話だ。 大学一回生の冬だった。 その日僕は朝から小川調査事務所という興信所でバイトをしていた。 バイトと言っても、探偵の手伝いではない。ただの資料整理だ。そもそも僕は一人で興信...
「さあ、行こう」 その言葉に背中を叩かれ、発進する。大学病院まではお互い無言だった。僕は何かを考えていたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。 大学病院の駐輪場に到着し、弾むように...
次の次の日、僕は昼前に師匠の家に行った。月曜日だった。 すでに身支度をしていた師匠はすぐに表へ出て来て、「自転車で行こう」と言う。 そして僕の自転車の前カゴに荷物を放り込むと、自分は後輪の軸の所に...
師匠から聞いた話だ。 大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をしてだらだらと過ごしていた。 酒も入っていたし、欠席裁判よろ...
師匠から聞いた話だ。 大学一回生の夏だった。 午前中の講義が終わり、大学構内の喫茶店の前を通りがかった時、僕のオカルト道の師匠が一人でテーブル席に陣取り、なにやら難しい顔をしているのが目に入っ...
「高橋永熾は軍事的侵攻のさいに、以前の領土で信仰していた八幡神社をこの地にも勧請してきます。 これは他の戦国武将にも往々にしてあったことです。 そうして勧請された若宮を祀る社、『若宮神社』と名づけ...
それから僕らは二人で温泉旅館『田中屋』を皮切りに、その近くにあった他の温泉をいくつかハシゴした。 どの温泉も入浴のみの客でもOKだった。 入浴料を払って汗を流し、新しい服に着替えてから旅館の人をつ...
目が覚めたのは朝の九時過ぎだった。 まだ頭が重く、肌触りの良い布団から出るのは億劫だったがなんとか気合を入れて起き上がった。三時間ほど寝ていたらしい。 広い部屋の真ん中に布団が一組だけ敷いてあるの...
『とかの』に帰り着いたとき、腕時計を見ると午後四時半を回っていた。 旅館の玄関から中へ向かって楓が「ただいま」と声を張り上げる。 少しして女将がフロントの奥から姿を表した。 「どうでしたか」 ...
師匠から聞いた話だ。 大学一回生の冬。僕は北へ向かう電車に乗っていた。 十二月二十四日。クリスマスイブのことだ。 零細興信所である小川調査事務所に持ち込まれた奇妙な依頼を引き受けるために、バ...
ウニです。次のお話は2010年の夏コミで同人誌に寄稿したものです。 すでに前から売り切れていたことと、1年が経過したことから、ネット上でも発表することにしました。 なお、先に某所に投稿していますが...
大学二回生の春だった。 その日は土曜の朝から友人の家に集まり、学生らしく麻雀を打っていた。 最初は調子の良かった俺も、ノーマークだった男に国士無双の直撃を受けたあたりから雲行きが怪しくなり、半チャ...