師匠シリーズ一覧

師匠シリーズ 第58話 古い家

聞いた話である。 「面白い話を仕入れたよ」 師匠は声を顰めてそう言った。 僕のオカルト道の師匠だ。 面白い話、などというものは額面どおり受け取ってはならない。 「県境の町に、古い商家の跡...

師匠シリーズ 第57話 トイレ

大学1回生の春だった。 休日に僕は一人で街に出て、デパートで一人暮らしに必要なこまごまとしたものを買った。 レジを済ませてから、本屋にでも寄って帰ろうかなと思いつつトイレを探す。 天井から吊り下...

師匠シリーズ 第56話 天使

京介さんから聞いた話だ。 怖い夢を見ていた気がする。 枕元の目覚まし時計を止めて、思い出そうとする。 カーテンの隙間から射し込む朝の光が思考の邪魔だ。 もやもやした頭のまま硬い歯ブラシをくわえ...

師匠シリーズ 第55話 人形

人形にまつわる話をしよう。 大学2回生の春だった。 当時出入りしていた地元のオカルト系フォーラムの常連に、みかっちさんという女性がいた。 楽しいというか騒がしい人で、オフ会ではいつも中心にな...

師匠シリーズ 第53話 貯水池

大学1回生の秋だった。 その頃の僕は、以前から自分にあった霊感が、じわじわと染み出すようにその領域を広げていく感覚を、半ば畏れ、また半ばでは、身の震えるような妖しい快感を覚えていた。 霊感はより強...

師匠シリーズ 第52話 追跡

大学1回生の冬。 朝っぱらからサークルの部室でコタツに入ったまま動けなくなり、俺は早々に今日の講義のサボタージュを決め込んでいた。 何人かが入れ替わり立ち代りコンビニのビニール袋を手に現れてはコタ...

師匠シリーズ 第51話 雨音

お詫びと訂正。 これからお話を投下しようとする直前になって、2年ぶりくらいに『降霊実験』を読み返してみたところ、思わず自分の目を疑いました。 「芳」という字と「茅」という字を書き間違えているのです...

師匠シリーズ 第50話 自動ドア

先日、ある店に入ろうとしたときに、自動ドアが開かないということがあった。 さっき出たばかりのドアなのに、戻ろうとすると反応がない。 苦笑して別のドアから回り込んで入った。 こういうときはえてして...

師匠シリーズ 第49話 鋏

大学3回生のころ、俺はダメ学生街道をひたすら突き進んでいた。 2回生からすでに大学の講義に出なくなりつつあったのだが、3年目に入り、まったく大学に足を踏み入れなくなった。 なにせその春、同じバイト...

師匠シリーズ 第48話 ともだち

大学2回の冬。 昼下がりに自転車をこいで幼稚園の前を通りがかった時、見覚えのある後ろ姿が目に入った。 白のペンキで塗られた背の低い壁のそばに立って、向こう側をじっと見ている。 住んでいるアパート...

師匠シリーズ 第47話 雨上がり

昨日から降っていた雨が朝がたに止み、道沿いにはキラキラと輝く水溜りがいくつもできていた。 大学2回生の春。 梅雨にはまだ少し早い。 大気の層を透過して、やわらかく降り注ぐ光。 軽い足どりで歩道...

師匠シリーズ 第46話 跳ぶ

俺は子供のころからわりと霊感が強い方で、いろいろと変な物を見ることが多かった。 大学に入り、俺以上に霊感の強い人に出会って、あれこれくっついて回っているうちに、以前にも増して不思議な体験をするように...