あれからどのくらいすぎただろうか。
その寒い日、無事に就職したことを報告する為に今は亡き親友の墓参りに行って来た。
その小さな墓前にはあいつの好きだった忽忘草の押し花が置かれていた。
「死んだ人間は生きてる人間が覚えててくれるけど、死んだ人間に忘れられた生きてる人間は、どうすればいいんだろうな」
そんなふうに笑っていたのを思い出す。
そして思い出す。
あの日の事を。
あれから数年がたち、アキヤマさんはおととしにめでたく結婚し、僕は少し寂しい思いをしたりした。
そんな中で思う。
あの頃、ナナシがしようとしていたことを止めていられたなら、ナナシが怯えていたことに気付いていたなら、ナナシは今頃こんな冷たい石の下にいることなんか無かったのかもしれないと。
ただ、それは全部後の祭りでしかない。
どうすることもできない。
どそう、全部あとの祭り。
最後の日の、話をしよう。