私の通う高校は入学時から校舎の改修工事だかで、校庭の隅にプレハブの実習棟があり、校庭が一望できるようになってた。
敷地はかなり広い学校で、畑なども併設していたためか校庭もかなり広々としていた。
高校二年の秋頃、文化祭のクラス委員だった私はプレハブ棟の3階で1人作業をしていて、18時過ぎ頃に片付けをし始めた時、なんの気もなしにフッと校庭を見てみると、隅の方でこちらに手を振っているような人影が見えた。
とにかく広い校庭の隅だったこと、暗くなり始めていたこと、そんなに目が良くなかったことなどから、誰かは分からなかったけど、野球部の友人だと思って適当に手を振り返した。
学校の横には競技場があり、夕方になると煌々と野球場のようなライトが灯ることがある。
その時競技場のライトが点灯し、その手を振っている人物の影が校庭にグッと伸びてきたんだけど、それを見てゾッとした。
その人物はずっと同じところに立って手を振っているだけのに、影だけは両腕と頭をブンブンと振り乱し、狂ったように踊っていたんだ。
突然の恐怖にさらされると息の仕方を忘れ吐きそうになることを初めて知り、あの踊る影に手を振り返してしまったことが恐ろしくて堪らなかった。
それからは走ることも出来ずに本校舎へ戻り、友人と一緒に帰路についた。
誰にも言う気にはなれなかった。
踊る影が私を認知していた気がして、誰かにチクるような形になれば突如私の元に現れるのではないかと思ったんだ。
こうして誰かに伝えるのは初めてだから、踊る影がどこからか現れない事を祈るばかり。
オチも解決もない話になったけど、個人的に洒落にならないほど怖かった体験。