親友

親友 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

5年前、幼稚園からの幼なじみだった親友の中岡(仮名)が肺炎で死んでしまった。
中岡はよく冗談交じりに、「死んだらお前の枕元に絶対に立ってやるからな」なんて言っていた。
俺の方も負けじと、「虚弱なお前よりも、無茶して事故死しそうな俺様の方が絶対に早死にするだろうからこっちが先手取るだろうよ」と言い返していた。

中岡が死んでから2週間も経っていなかったと思うが、俺はショックから立ち直れず、他の友人達ともほとんど会わずにアパートに一人で居た時だった。
部屋のロフトで寝ていると、小さな地震のような振動で目が覚めた。
俺は元々そういった振動で目を覚ますことが多かったので、また地震でも来たかなと思い、ロフトの下にある電光表示の時計を見ようと顔をロフトから出した。
すると、数日前に死んだ中岡が腕組みをして見上げている。

洒落っ気のない奴で、いつものワイシャツと茶色系のスラックス姿で不敵な笑みを向けている。
怖さや驚きよりも、生前に言っていた事を本当にやりやがったという気持ちの方が先に立ち、頭の中で「やられたっ!」と俺は考えていた。

次の瞬間、中岡はまるで見透かしたように「まっ、そういうことだ」とはっきりと言うと、玄関に向かって消えていってしまった。
生前に遊びに行ったりしても、別れ際は「じゃっ」の一言だけで手も振らず振り返りもしない奴だった。

あいつらしいプレーンな別れ方がそのままで、姿が消えた後も嬉しいやら先を越されたことが悔しいやらで、俺は妙な気分で泣いていた。

あの野郎、今度墓参りに行ったら柄杓で水をかけずにバケツで水をかけてやる。

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