真っ暗なトンネル

真っ暗なトンネル 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

数年前に郊外に家を買った俺は勤め先が駅から近い事もあり電車で通勤していたんだ。
子供が生まれたばかりのことだから5年位前までは・・・
現在は多少の通勤渋滞は我慢して車で通勤してる。

その日は会社の飲み会(月一くらいである単なる飲み会)で帰りも遅く終電とまではいかなかったけど終電手前2本目~3本目って電車だったと思う。

俺が電車に乗り込んだ時点で人はまばらで余裕で座れる状態だったんで、シートに腰を下ろしウトウトしてた。
乗り換えもなく1本で家の最寄り駅に到着するし、時間も50分ほど掛かるのでウトウトしはじめたんだ。
途中ここいらのベッドタウン的な大きな団地地帯やマンションの多い駅で殆どの人が降り始めそのザワザワした感じで目が覚めた。
そこから20分ほどで降りるのでそろそろ寝ちゃやばいなと思い、立ち上がって窓の外を眺めてすごす事にした。

俺が下車する駅の2つ手前で最後の集団が降りていく、この時間そこから先は車両に俺一人とか他に一人二人しかいないなんて事は日常茶飯事だった。
今日も案の定2つ手前の駅でぞろぞろと降りて行き俺の乗る車両には俺独りになった(駅の階段の都合で前から2両目の一番前のドアがベストポジションなんだ)

次の駅と俺の降りる駅との間には山を貫通するトンネルがあり3分ほど真っ暗なトンネルを電車が通過する、都内の地下鉄なんかとは全然違う掘りっ放しな監事の古いトンネルだ。
トンネルに入るとちょっっと窓に映った自分の姿を見て髪を直したりなんかしてた。

「あれ?」

窓越しに映る背後の座席に50代の登山客って感じのおっさんが座ってる、完全に一人だと思ってたので一瞬ビクっとなったが酔ってることもあって気にしない事にした。
しかしそうなるとなんとなくそっち側を見るのは気まずくて、俺は改めて窓越しにおっちゃんを見てみた。

「うわっ!!なんか超見てるんですけど・・・」

おっちゃんは俺のほうを睨むでもなくニヤけるでもなく表情のないとしか表現できない顔で凝視してる。
ますます後ろを振り向きづらくなった俺は視線を外し携帯を取り出そうとポケットに手を入れたのだが携帯を取り出したと同時にストラップに引っかかった家の鍵が落ちてしまった。
しゃがんで鍵を拾い上げてふと窓に目がいった、おっちゃんが俺の真後ろ30cm~50cmくらいのとこに立ってた。
登山道具のピッケルのハンディー版みたいなの振りかざして・・・

「うわぁぁぁ!!」

夢中でおっちゃん突き飛ばして客は居なかった気がするけど運転手がいる先頭車両に逃げ込もうと思い、車両間にあるドアを開けようと手をかけたとき後ろの様子が車両間ドアのガラスに映ったんだ。
誰もいねーでやがんの。
まもなく到着した駅に飛び降りるようにして降りた、他に若いカップルとサラリーマンが後ろの方の車両から降りてきた。

「あいつはまだ電車か?」

走り出した電車をホームから眺めてたが数人の乗客は居たもののおっちゃんの姿はどこにも無かった。
その日家に帰って嫁に事の次第を話し車通勤に変え、飲みがある日は2つ手前の駅でおりてタクシーで帰ってる。
多少の出費や不便はあるがもう二度と夜にあのトンネルを通過する気は起きない。

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