キャンプブームの頃だった。
私達は友人と2人で割りと空いている所を歩いていると40代位の2人の男性に「火はありませんか?」と声をかけられた。」
煙から変な匂いがしていて気になったが、話みると2人は兄弟で、東京から来たという。
私は理由もなく2人とも好きにはなれなかったが、友人は兄の方と楽しげに話していた。
暫くすると友人が「怖い話をしない?」と言ったが私は「余計寒くなる。」と乗り気ではなかったが流れで話す事になった。
すると兄の方が、こんな話を始めた。
小学4年の時、都心から引越して来た時に体験した話です。
タナカくんという々学年の友達ができました。
毎日一緒にいるうちに気付いたのですが、タナカくんの体にはどこかしらにアザがありました。
「どうしたの?」と聞いても「何でもない」と笑って答えるだけ。
でも毎日のように聞こえるお母さんの「このクソガキ」や「死ね」という怒鳴り声などで薄々は知っていました。
多分、虐待されていたのでしょう。
ある日、救急車の音がして外へ出てみるとタナカくんが担架で運ばれてました。
坊主頭には黒く固まった大量の血がついてました。
お母さんは「弟と喧嘩して壁に頭をぶつけた」と説明していました。タナカくんの弟は無表情で立っていました。
お母さんは魔女みたいなワシ鼻の先が話すたびにプルプルと揺れてました。
数ヵ月後、タナカくんは退院しましたが頭を打ったせいなのかいつもと違った行動をとり僕を驚かせました。
それは例えば、野原で一緒に遊んでいると突然しゃがんでバッタを美味しそうに食べたり、公園の鯉を捕まえて頭から食べたりというものです。
その頃から会う度にタナカくんは「何か」を食べており弟がいつも食べ残した「何か」を埋めていました。
気味が悪かったですが、病気だからと仕方なく遊んでました。
しかしさすがにもう嫌だなと思った事があります。それは、家で「福笑い」をした時でした。
それを見てタナカくんは「おいしそうだな」とつぶやいたのです。それから段々、距離を置くようになりました。
そんな時、事件が置きました。
タナカくんはお母さんの大きなワシ鼻を食べてしまったのです。
当時、団地の周りはマスコミが殺到していましたから嫌でも耳に情報が入りました。
タナカくんは酔っ払って眠っているお母さんの鼻を「復讐だ」と叫びながら噛み切って、その鼻をフライパンで焼いて食べたそうです。
と、いう話だった。
焚き火が「バチン」とはぜる音の後に友人が「それでタナカくんはどうなったの?」と兄に聞くと「施設に入ってから消息不明」と私の顔を見た。
火のせいなのか、タナカくんが「何か」を食べている時のように見えてしまった。
息が止まる感じになり急に怖くなった。
思わず友人に「トイレに行かない?」と言うと今まで黙っていた弟の方が「一緒に行こうか?」と言ってきたので体が固まってしまった。
友人が明るい口調で断り2人で来た道を戻った。
トイレに入ると寒気がひどくなり、帰りたいと話すと友人も同意見で兄弟を置いて車に乗ってしまった。
帰り道に考えていると、さっきのタナカくんの話は自分自身の話なのではないだろうか、あの焚き火から変な匂いがしていたがアノ兄弟は何を焼いていたのだろうか。
少し時間が経つとバカな妄想だな、と笑いそうになった。
が、友人の話を聞いてまた寒くなってしまった。
「いや~、
『大きな瞳だね。おいしそうだ』
なんて面白くない冗談の後にアノ話は気味が悪かったね」と。