よくできた彼女

よくできた彼女 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

俺は今、彼女と同棲している。
彼女は物理学を専攻している大学院生なんだけど、優しくて、とっても健気(けなげ)。

俺が酔っ払った時に、どんなに暴力を振るっても、彼女の大事な物を叩き壊しても、文句を言うことはないんだ。

我慢強くて、本当によくできた子だ思う。
我慢強いだけじゃなくて、彼女は俺をとても愛してくれているんだ。

気が付いているとは思うけれど、俺は短気な性格。
すぐイライラしちゃうんだ。
だから彼女はつい最近、俺にライターのプレゼントをしてくれた。

「イライラした時は、煙草で一服して落ち着いてね」

と言って。

なあ?
とても優しい子だろ?

さっきも彼女はさ、俺の大好物であるホットケーキを焼いてくれると言って、大量の小麦粉を買って来たんだ。

おいおい、さすがにそんなに食えねえよ、って思うくらいの量の小麦粉。

しかもさ、買い過ぎたらしく、彼女の細すぎる身体の腕力では持ちきれなかったんだろうね。
小麦粉を床にばら撒いちゃって。
袋が破けて部屋中に粉が飛び散って、部屋全体が煙たいくらい。

彼女は慌てて、
「ごめん、雑巾買ってくるね」
と言って、また出かけて行っちゃった。
こういうドジなところも、これまた可愛いんだよなあ。

それにしても、少し遅くないか?
雑巾一枚買うのに、どれだけ時間使ってるんだよ。
待たされるとイライラしてくるな。

おっと、こういうイラついた時のためのライターだったよな。
一服して落ち着こう。



<解説>

彼女の専攻は物理学。
その知識を生かして、粉塵爆発を起こそうとしている。

※粉塵爆発(ふんじんばくはつ)
ある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。

ライターをプレゼントしたのも、大量の小麦粉をばら撒いたのも、全てはこの計画のため。
もちろんその目的は、彼氏の命である。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い