ドン!ドン!ドン!
「先輩!俺です!○○です!空けてください!」
いきなり叩かれたドアに驚いたが、後輩と分かりほっとする。
「ってかなんだよ、いきなり、マジビビッタぞ」
ぶつぶつ言いながらドアを開ける。
後輩が青い顔しながら転がり込むように入ってきた。
「何だお前、…..どした?」
ただならぬ雰囲気を悟って、水を汲み後輩に渡す。
水を飲み干し、大きく深呼吸をひとつ。
少し落ち着いたらしい。
「先輩、俺幽霊乗せちゃった、車に乗せちゃった…」
「…え?」
以下後輩の話
後輩はこの休み中地元に帰ってた。
こっちに帰ってくる道、少し遠回りになるが別な峠道があって、そっちの道は車の通りも少なく、結構飛ばせるのよ。
後輩はたまには遠回りして帰ろうと思い、そっちの「峠」を通ったんだ。
山頂には小さな駐車スペースと「祠」があって、そこ通った時に嫌なこと思い出した。
その祠の噂だ。
祠の中には6体のお地蔵さんがあるらしい事。
普段は閉じてる扉が開いてる時があるって事。
6体のお地蔵さんの、首が無いように見える時があるらしい事。
…6体の首が無いの見たからなんか起きたってのは、聞かないけど。
…まさか、ホントに無かったりして。
そう思って祠に差し掛かった時、少しスピード落としてチラ見してみた。
…え、ウソ、ねぇじゃん…
スピード上げて後も見ないで、早く帰ろう、なんも見てない、って急いだ。
下りにしちゃ結構なスピード出して帰ってたら…
いきなり気温下がった。
ゾクっとして……助手席に気配を感じた。
…なんだ、だれだ、なんで?
軽くパニくって、でも助手席は見れない。
首はサイドミラー側に向けて、視線は前。
左は見れない。
!!!!?
運転席側のガラスに映る女がいた。
左見ないように極力右側向くようにしてたら右側の視界に入ってきた。
白い服で、髪がすごい長い。
うつむいてる。
手をひざの上にして。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ
心の中でつぶやきながらそれでもスピードは落とせなかった。
この峠を早く抜けたかった。
鳥肌立たせながら、右側に映る女をちらちら視界に入れながら峠を下ってた。
ふと、気づく。
女の頭がさっきより持ち上がってる。
ヤバイ!早く!消えて!早く峠!!
ゆっくりとだが、確実に頭が上がっている。
伸びきった背中が見えた。
うつむいていたので髪はまだ顔に掛かっている。
…顔をこっちに向けようとしてる。
髪がゆらっと揺れた。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
もう限界だった、車を急停止させた、と同時にバッと左を見た。
誰も居なかった。
気配も消えていた。
ミュージックだけ、うるさく聞こえてた。
……暫く呆けて、我に返り急いで車を走らせた。
俺のフレと後輩が俺に話してくれたありがちっぽいホントの話。
後日俺が朝に祠確認に行ったが、そん時は閉まってた。
6体の地蔵までは、さすがに確認できなかった。