中学生の半ば頃だったはず。
私の学校はかなり辺鄙な場所にあり、学校を隔てて片方は都市部、もう片方は山林部、のような感じで、極端なほどに景色が分かれていた。
だから、遊ぶのには困らなかったわけだ。
都市側にあるゲームセンターに飽きた時、私と友人達は山林部で遊ぶ事にした。
あれは・・・「探偵」だったかな?とにかく、「犯人」役がいて、「探索者」がそれを探すと言う感じのゲーム。
それをしていた時の事だ。
私は逃げる「犯人」役で、どこか良い場所が無いかと一人で山中を歩いていた。
そして、小さな広場のような場所に出たとき、意外な物を見つけた。
電話ボックス。
それは、廃棄されていた・・・というよりかは、乱雑に倒れているのではなく、きちんと立てて置かれていた。
それだけでもかなり変な事なのだが、そのボックスの到るところに、「KEEPOUT」の黄色いシールがベタベタと貼られていたのだ。
その内部は曇っている上、シールのせいもあり完全に見えない。
何でこんな物が・・・と考える暇も無く、その内部から物凄い声がした。
ダーーーーーーーーーーーーーーゼーーーーーーーーーーーーー
驚いて後ずさりしたら、ボックスのガラスの面の一箇所に30個くらい?(多すぎてよく覚えていない、大きさは人の指がちょうど出し入れできるくらい)にパリンと穴が開いた。
その全てから人間の指が出ていた。
指の数から、あの中にはたくさんの人間がいたはずだ。
だが、電話ボックスにあれだけの数が入るはずが無い。
では、中にいるのは一体何なのか。
ダーーーーーーーーーーーーーーゼーーーーーーーーーーーーー
もう一度聞こえた物凄い叫び声。
だが複数の声ではなく、明らかに「単体」から出される声だった。
そして、だしぬけに理解してしまった。
ああ、そうか。分かったぞ。
「出せ」って言ってるんだ・・・。
木々を縫って降り注ぐ太陽の光が、恐らくは雲によって遮られ、森の中が少し暗くなったと同時に、私は駆け出していた。
いくつもの音・・・鳥の鳴き声、木々のざわめき、枝の折れる音、そしてあの叫び声。
それらを気にして振り返る事など出来るはずが無かった。
友人と合流した後、体験した事を彼らに説明した。
あまりにも気味が悪く、余りにも怖すぎたので、誰も行こうなどとは言わなかった。
私の必死の説明が彼らにも伝わったのだろう、それから私たちは山林部で遊ぶ事はなくなった。
「指だらけの怪物」・・・こう言うとシュールで、少し笑えるかもしれないが、ただ現実として残っている記憶、出来事を、ここに書いてみた。