大学生だった頃、新宿駅のJRの連絡通路をいつものように歩いてたんですよ。
お昼くらいだったかな、時間は。
友達と二人で映画見に行くんで、東口の方へ駄弁りながら歩いてたら、その友人が笑いながら、
「おい、あれ見ろよ」
と前の方を指差しました。
見たら向こうのほうから、かぶりものを被った珍どん屋みたいな女性が歩いてきたんです。
すごい人ゴミの中で、それがすごい目立ってた。
派手な和服を着てて、江戸時代の「おいらん」を模した大きいかぶりもののように見えました。
私もこのゴミゴミした雑踏の中で、ちょっと微笑ましい光景というか、場違いな光景に可笑しくなって声を出して笑ってしまいました。
でも、その珍ドン屋の女性がだんだんと近づいてきて、僕たちの脇を通り過ぎた時には、僕たち二人は顔をこわばらせたまま真っ青になってしまいました。
かぶりものじゃなくて、本当の顔だったんですよ。
異常にでっかい顔。
中年の女性でした。
巨頭症というらしいです。
すれ違う間、僕たちをじぃ~っとすごい形相で睨んでいました。