とびっきりの廃墟

今から10年以上前、小5の時の話です。

当時私のクラスでは、廃墟を探検して結果を報告し合う「廃墟巡り遊び」なるものが流行っており、毎週月曜日は、土日の間にどんな廃墟に行った、とかこんな体験をした、こんなものを見つけた、などという話題で持ちきりでした。

カルテを持って帰ると、その日の夜にしわがれた男の声で「カルテ返せ」と電話がかかってくる、という噂で名高い廃病院や、一家全員が惨サツされた、通称皆頃しの館(今はもう焼失しています)、し体埋めスポットとして有名な○○山の幽霊トンネルなど、私自身、友人と一緒に数々の廃墟や心霊スポットを巡りましたが、そのほとんどが満足の行くような代物ではなく、大した発見も出来事もありませんでした。



そんなある日、友人Aが「駅の近くにとびっきりの廃墟を見付けた」と私に言ってきたのです。
既に地元近辺の廃墟はほとんど行き尽くした感があり、そんな身近に廃墟があるなど思いもしなかった私は、学校が終わった後、他に友人2人も誘って、4人で探検することにしました。

そして友人Aに連れられて、私達はその廃墟に向かいました。
駅前の細い路地をずんずん進み、地蔵が置かれた四つ角を右に曲がり、更に蛇行した林道を進むと、鬱蒼と茂る草木に囲まれて、その廃墟はありました。
それは古びた二階建ての一軒家で、不気味にひっそりと佇んでいました。

私はこんな近くにこんな素敵な廃墟があったんだ!と若干感動していましたが、A以外の連れの二人は、そのビジュアルに圧倒され、「やっぱり帰ろう」とまで言い出し、かなり怖気づいていたというか、不気味がっている様子でした。
そうして私とAで半ば無理やり二人を引き連れ、中に入りました。

中は予想通り床抜け、蜘蛛の巣状態で、日本人形や蝋燭、漢字だらけの紙など色んなものが散乱していて、私としてはかなり見ごたえのある景観でした。
最初は怖気づいていた二人も、徐々にいつもの調子を取り戻しつつあり、四人でふざけ合いながら襖などを開けまくっていると、押入れ?の中に、階段を見付けたのです。
(となりのトトロのさつきとメイの家みたいな感じです)
そう言えば二階建てなのに階段がない、もしかしてここから二階へ行くのか、と、私達はわくわくしながらその階段を上って行ったのです。

二階もほとんど一階と変わりなかったのですが、一番奥に、やけに襖が新しい部屋があったのです。
中に入ると、他の部屋は荒れ放題で汚れ放題なのに対し、その部屋だけきちんと片付けられていて(というか中に何も無くて)畳もまだ綺麗な緑色をしているし、とにかくとても不自然な部屋でした。

そして、何故かほのかに線香の匂いがするのです。
友人の1人が「ここから匂いするで!」と押入れを指差しました。
何だかさすがに私も嫌な予感がしたのですが、思い切って四人でその押入れの襖を開けることにしたのです。

中を開けた私達は驚愕しました。
押入れの中には大きなひな壇状の仏壇があり、新鮮な果物や野菜、買ったばかりと思われる絵本などがお供えされていたのです。
そして最上段にはおっかぱの少女の遺影が飾られており、両端には今さっき火を付けたであろう線香が煙を上げていたのです。

私はその時、生まれて初めて腰を抜かしました。
腰を抜かすという言葉は知っていましたが、まさか本当に自分が腰を抜かして動けなくなるとは夢にも思いませんでした。
友人二人は真っ先に私を置いてその廃墟から逃げ出し、友人Aは呆然と遺影を見つめながら失禁していました。

その後何とか私と友人Aはその廃墟から脱出したのですが、今でもその時のことを思い出すと鳥肌が立ち、気分が悪くなります。

ちなみにその廃墟は今も同じ場所に存在しています。
未だに誰かがあの女の子を供養しに行っているのでしょうか…
それ以来、廃墟に出向くことはなくなりました。

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