笑い声

笑い声 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

深夜、誰もいないビルに一人でいた事がありますか?
薄暗い廊下で立ち止まると、ボーッいうような耳鳴りが聞こえそれが次第にじんじんとした痛みに変わり、一瞬でも気を緩めると頭から次第に暗がりに溶けていくような錯覚がする。

親戚からの頼みごとを安請け合いして、私は思いっきり後悔していました。

「さっき車で通りかかったら入口にタチの悪そうなヤツがいたから、念のため見回りに行って欲しい」

場所は私の家から車で数分、日ごろお世話になっている親戚であるし、足が不自由な人なので2つ返事でOKしました。

親戚がオーナーのそのビルは3階建てで、1,2階はテナント
(店が入っても長続きせず、当時は1,2階とも空きでした)
3階には親戚が書斎代わりに使う部屋と、私が倉庫として借りている部屋がありました。

到着したのが夜の11時頃。ビルと言ってもかなり小さく、全部の階を回っても30分はかからない。
手早く済まそうと駆け込みました。
1階から順に回り始め最後の3階まで異常はありませんでした。
3階の書斎で一息つくため、煙草に火をつけましたが、前述のとうり何も音がしないという事に対する恐怖が、段々と重くのしかかってきて、さっさと引き上げる事にしました。

3階建てですが足の不自由なオーナーのためにエレベーターが有るので、早速それに乗り込み1階のボタンを...
焦っていたのか2階のボタンも押していました。
2階に到着。
軽い振動とともに扉がスーッと開きました。

私はぼんやりと扉の向こうの2階の壁を見ていました。
エレベーター内の灯りがフロアにもれる...
いつもならそこには少し黄ばんだ白い壁があるはずでした。
...何かが違う...
初めはシミか何かと思っていたソレに気づいた瞬間身体は硬直して動かなくなりました。

無表情な女の顔でした。
扉越しに見える壁いっぱいの大きな顔でした。
透けたその顔はシーンと静まりかえった中に浮かんでいました。
私は目を外すことが出来ませんでした。
その顔は表情を段々と変えていくのです。

笑っていました。
精神を病んでいる様な笑い方でした。
でも声は全く聞こえず、相変わらず静まりかえっていました。
エレベーターの扉はオーナーの為に時間設定を変えてあり通常より閉まる時間が遅くなっていました。
身体が動かずボタンも押せない。
視線も顔から外せない..
数十秒後に扉が閉まるまで、ずぅっと狂った様に笑い続けていました。

私は逃げるように家に帰りました。
途中、鍵を返すために親戚の家にも寄りましたが、何も話せませんでした。

今まで音が聞こえない恐怖に怯えていましたが、もしあの時、笑い声が聞こえていたら...

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