これは、私が学生時代に独り暮らしをしていたアパートで起こった体験談です。
当時私は20歳の大学生で、親の仕送りとアルバイトの稼ぎで生活をしており、ゆとりはありませんでした。
下の弟は私立の高校に進学した為に、一般サラリーマン家庭の我が家では仕送りするのは辛かったと思います。
少しでも親の負担を減らそうと思った私は、格安のマンションを見つけて引っ越しました。
その部屋はオートロックでエレベータ付き、しかも3部屋もある物件でしたが、何故か格安だったのです。
とにかく安いところを探していた私にとっては、何も疑問に思わずラッキーと思って契約しました。
荷物が少なかったので、大学の友人で車を持っているAと、仲が良いB、Cとで引っ越しをしました。
よく晴れた日の日曜日を選んで引っ越しを開始し、午後14時には全て終わることができました。
私は手伝ってくれたAとBとCにせめてものお礼と引っ越し祝いを兼ねて、そのまま新居で簡単なパーティーをする事にしました。
パーティーとは言っても、ピザを取ったり近所のスーパーで惣菜とビールを買ってきて飲む感じです。
もちろん、Aは車で来ているので全員泊まっていく事になっていました。
一番最初におかしな事を言い出したのはCでした。
トイレに行ったCが突然、叫び声を上げました。
何事かと思い駆けつけると、トイレに入り鏡を見たら女の子が笑いながら見ていたと言うのです。
私達は鏡を覗きましたが女の子の姿など当然ありません。
その時は、Cの飲み過ぎで話は終わりました。
昼から飲んでいたので、夜はすっかりグダグダな状態になりました。
眠気も襲ってきて、Aがシャワーを浴びたいと言い出したので順番に浴びて寝ることにし、なんとか睡魔と戦いながらも全員がシャワーを浴び終わって雑魚寝していました。
その時、女の子の笑い声が聞こえてきました。
隣の部屋から確かにハッキリと聞こえるのです。
そして今度は笑い声だけではなく、バタバタと走り回る音も聞こえ始めました。
時間はもう深夜。
なにか違和感を感じた私達は全員起きていました。
「隣って誰か住んでるの?」
「いや、誰もいないはず…。」
入居前の話では、隣には誰もいないと聞かされていました。
皆、青ざめた顔をしていました。
ですが本当は家族でも住んでいて、不動産屋が勘違いしていたのだろうと話がまとまり、一応確認してみることにしました。
ベランダへ行き、恐る恐る隣の部屋を覗き込みます。
部屋の中はカーテンもなく真っ暗で、人が住んでいる気配はありませんでした。
しかし、そこには長髪で年は4歳?程の女の子が笑顔で立っていたのです。
女の子は私達がベランダから覗いているのに気づくと、窓に走り寄ってこう言いました。
「お兄ちゃんたち遊ぼう。」
これはヤバい!と怖くなった私達はマンションから急いで出て24時間開いているファミレスに行き、朝を迎えました。
翌日、マンションへ帰宅してみると女の子はいませんでした。
気味悪がっていた友人達には、急いで帰宅してもらいました。
1人残った私は、取り敢えずざっと荷物の整理をして管理人室へと挨拶へ行きました。
そこでそれとなく管理人さんから、私の前に入居していた人の話を聞き出すと情報が得られました。
どうやら前は若いご夫婦が、4歳くらいの女の子と暮らしていたそうです。
とても可愛い髪の長い女の子だったそうです。
ところがある日突然姿を見かけなくなり、ご夫婦も何も告げずに引っ越しされたそうです。
それからというもの、私の部屋では不可解な現象が起こるので借り手が付かず、格安物件となり市場に出ていたのを私が借りたとの事でした。
私は、管理人さんに昨晩出た女の子の話をしました。
以前入居された何人かの方も同じ事を話されていたようで、毎晩悩まされた挙句転居して行かれたそうです。
私は怖くなりましたが、他に行く所もないので戻って寝る事にしました。
夜になるとまた女の子が出てきました。
同じ様にお兄ちゃん遊ぼうと言うのです。
しかし、不思議と怖さを感じませんでした。
元々、私は子供と遊ぶのが好きだったので1時間程遊んであげました。
すると女の子はありがとうとお礼を言い、窓から寂しそうにマンションの中庭の木を指すのです。
「どうしたの?」と聞くと「見つけてお願い。」と言って消えました。
翌朝、この話を管理人さんにすると半信半疑ながらも木を調べてみることになりました。
しかしこれといった変化はなかったので、根元を掘ってみると…人の骨のようなものが出てきたので警察に連絡しました。
骨は小さな女の子のもので、犯人はその両親でした。
殺害の詳しい動機などは聞いていません。
ただ、それ以来女の子の幽霊は出て来なくなりました。
きっと見つけて欲しかったのだと思うと、今でも心が痛くなる出来事です。