うちの家のまわりには、野良猫が2匹いる。
誰が呼び始めたのかわからないけど、一匹は黒と白の2色柄だから、ニケ(二毛)。もう一匹は漫画のホワッツマイケルみたいな茶色のトラ柄なんだけど、アカドラと呼ばれている。
2匹ともタマタマが小さいので去勢されてるみたい。
お宅ごとにご飯、寝る場所、トイレなど場所が決まっていて、毛並みツヤツヤのでっぷりっぷり。
野良猫と書いたが、地域で飼ってるというのが合っている気がする。
みんな猫を可愛がっているけど、人間同士はそんな仲良くもないけどね。
だから先日、うちから30メーター程離れたお宅で強盗未遂があったのだけれど、その家の人とは生活スタイルも年も違うから、ひどい話だけど、心から同情するとかは特になかった。
それでもご近所だから、他の近所の人達とお見舞いに行ったら、その強盗未遂に遭った家の人に奇妙なことを聞いた。
強盗は普通夜のようなイメージがあるけれど、平日の昼間に侵入されたようだ。
そのお宅は小学生の娘、50代の夫婦の三人暮らしで、二階のある普通の戸建て。
いつもなら娘は学校、夫婦は仕事なのだけど、前日食べた寿司に夫婦であたり、無事だった娘は学校へ行かせたけど、夫婦は二階のベッドで寝込んでいた。
奥さんの方が眠りからふっと目を覚ますと、一階で誰かが歩いているような音がする。
旦那は隣に寝てるし、娘は学校。
誰だ!?と、思って呆然としていると、階段を上ってくる気配がした。
怖さに体は固まってしまい、寝室のドアを見つめるしか出来なかった。
しっかりドアを閉じてなかったらしく、ドアノブは回らずドアが開いた。
けれど、人間であろうことを想定した目線には人がいない。
視線を落とすと、汚い服の赤ちゃんみたいに小さな男が両足を手で囲むようにして座った状態で、尻だけで歩いて近寄ってきていた。
ビビると悲鳴って出ないみたいね。
声は出ないけど、体は飛び上がってドアの方を見やるともう一人、またまた小さな男がこれまた同じく、尻だけ歩きで来ていた。
二人もいる!!
なんだか色々覚悟した奥さんだったが、どっちかの男が
「おい~、起きる時間だぞ、おい~。」
と、言った。
そしてもう一人の男は窓を指して
「にげよう~、にげよう~。」
と不気味な声で繰り返す。
普通、失神でもしそうなものだけど、奥さんは旦那をそっと起こして一緒に二階の窓から飛び降りた。
そして一階の窓が割られているのを確認して近所の家に這うようにして逃げ、通報。
警察が来て、一階に侵入していた一人の男を捕まえた。
犯人は単独だったらしい。とはいえ、灯油と金槌を持っていたらしいから、とても怖いと思う。
警察の人が家の中を全部確認したけど、犯人の他に部外者の指紋は出ない代わりに、寝室の床に動物のウ●コがベッド目掛けて筋を作っていたらしい。
奥さんは言う。
「不思議なんだけど、あの小さいオッサン二人、ニケとアカドラのような気がするよ。
強盗から助けてくれたとかより、俺らのトイレが汚いぞ~!ってただ抗議しに来ただけだったりして。」
と、いつも通り2匹の猫のトイレを片付けながら、奥さんは捻挫の足で笑った