大事な電話

大事な電話 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

俺が大学2年の時の実話です。
その日のことは、十数年経った現在でもはっきりと覚えている。

その日、朝起きると、

『今日は絶対出かけちゃダメだ。大事な電話がかかってくるぞ』

と、何の根拠もないのに、なぜか強い確信が胸の内から沸きあがってきた。
なぜか分からない。
でも俺はその予感を信じて、大学の講義を自主休講し、自分の部屋まで電話コードをのばし、かかってくるあてのない電話をじっと待っていた。

お昼過ぎ、1本の電話がかかってきた。
それは高校の同級生の女のコだった。
なんでも、今は東京に住み込みで働きに出ているが、数日休みがとれたので帰省していて、ちょっと電話してみた、とのことだ。
その子とはあまり話しをしたことがなかったのだが、電話で話しているうちに高校の思い出がよみがえってきて、なんだか楽しい気持ちになってきた。
そんな雰囲気だったので、「せっかくだからこれから会おうよ」と誘ってみたが、

『今日はダメなんだ、でもまた連絡するね』

という返事だった。
それからも、いろいろと高校の頃の出来事を言いあって、笑ったりした。

なんとなく話題もなくなって、そろそろ電話を終わろうかという時、彼女はこんなことを言った。

『ねえ、そういえば、B子ちゃんおぼえてる?あの子に電話したんだけど、なかなか繋がらなくて・・・』

B子というのは、俺と同じバレーボール部に入っていた同級生で、俺とはまぁ仲が良かった女の子である。

『私、すぐに帰らなきゃいけないから、Aクン(←俺)に伝言頼めないかなぁ』

と言うのである。
別に断る理由もないので、すぐに「いいよ」と了承した。

『あのね、こう言ってもらえば分かると思うんだけど、B子ちゃんといっしょに書いた手紙、もういらなくなっちゃったから、捨てちゃっていいよって、それだけ』

「うん、わかった。伝えておくよ」と、俺は電話を切った。
はて、電話ならいつでもできるのに、どうして伝言頼むのだろう?と、ふと思ったが、B子ともたまには連絡を取りたかったし、その口実が出来たので深くは考えなかった。

1週間ほどたった夜、俺はB子の家に電話をした。
B子はすぐに電話口に出た。俺からの電話を少し驚いているようだった。

「こないだね、(仮にCちゃんとします)から電話があってね、伝言頼まれたよ」
『え?C・・ちゃん・・?』
「うん。ええと、いっしょに書いた手紙はもういらなくなったので、捨ててください、って」

俺は頼まれた通り伝言を伝えた。

・・・どうしたんだろう?B子から返事がない・・?

なんだか電話の向こうで、しゃくりあげる声がかすかに聞こえる。
・・・泣いてる?

「どうしたの?」

俺は心配になり声をかけた。

『あのね、Aクン、ヒクッ、私がCちゃんと仲が良かったのは知ってるでしょ』

いつもつるんでいたのは知っていたので、俺は「うん」と答えた。

『Cちゃんといっしょに書いた手紙ってね、ラブレターなの。
ヒクッ、それね、Aクンへのラブレターだったの』

どういうことか飲みこめず、俺は何も言えなかった。

『あの頃私たち、Aクンが好きだったんだヨ。
ヒクッ、でね、いっしょにラブレター書いたの。
渡すつもりは最初からなかったから、将来結婚してください、とかね・・・書いてたの・・・それをね、卒業するとき、Cちゃんが私に持っててって言うから、私が預かったの・・・』

俺は何だか良く分からないまま、「え?今Cちゃんて何してるの?」と、とっさに聞いた。

『・・・Cちゃん・・・Aクンしらなかったの?
ヒクッ・・・Cちゃん高校卒業と同時に、急性○○病(病名は伏せます)で入院してたんだよ』

B子はさらにこう続けた。

『先週、Cちゃん手術したの・・・でも・・・だめだったみたいで・・・』

そこからは、B子の泣き声で会話にはならなかった。

話はここまでです。
B子が言うには、あたしの電話は夜かければすぐに繋がるので、きっとCちゃんはAクンと話しがしたくて、B子の電話が繋がらないと嘘を言ったのだろうということだった。
俺はあのとき、Cちゃんと電話で楽しく話しができて、本当に良かったと思っています。
不思議な体験は、冒頭の予感の部分だけですが。(すみません)

後日談として、B子とはこれが縁(?)で結婚しまして、今年結婚10年目になります。

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