魂の重さ

魂の重さ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

小学生の頃、人間は死んだ後に数十グラム減ってそれが魂の重さっていう眉唾な話を授業中に担任が話した。
海外で本当にあった実験らしいのだけれど、小学生に何余計な話しをしているんだと今にして思う。

その日の放課後、
当番で教室の掃除をしていた時に同じ当番のクラスメートがその話を蒸し返してきた。
テレビで見たホラー番組に髪が伸びる人形の特集があったらしくて、ようは大切にされたり話しかけたりしていた人形の髪が伸び始めてまるで魂が宿ったみたいだっていう話。

そのクラスメートはじゃあ魂が宿った人形は宿る前より数十グラム重くなるのかなって言い出した。
なんか薄気味悪いこと考える奴だなって思ったけど実験しようと言い出したときにはもう俺の中では完全に気味の悪い奴になった。

一緒にやろうと俺は誘われたけれどそんなことをして実際に重くなった日には怖い思いをするので断った。
でもそいつはその日の夜から実験を始めた。

翌日の学校で聞くと、そいつは祖母の部屋にある市松人形の重さを計ってその後熱心に話しかけたらしい。
520グラムあったと俺は聞いた。

二ヶ月位経って俺はその人形の話なんか忘れかけていた頃朝のHR前に件のクラスメートが鼻息を荒くして話しかけてきた。
人形の髪が伸びてきたと。

なに言い出してんだこいつって率直に思ったけど直ぐに人形のことを思い出してやっぱりなに言い出してんだこいつと思った。
そいつはあれから毎晩人形に話しかけていたそうで、昨日いつものように祖母の部屋に入った時におかっぱ頭だった髪が肩辺りまで伸びていたそうだ。
そうなんだと返事をしたけど俺はその話を信じていいのか分らなかった。

そいつは見せたい物があると言って俺を自分の机まで連れて行った。
机につくとそいつは鞄をごそごそと漁り、僕に折りたたんだティッシュを渡してきた。
僕はそれを開いた時思わず飛びのけてティッシュを落としてしまった。
中には短い髪が入っていた。

そいつは僕が落としてしまったティッシュに少し散った髪を拾い入れると

「伸びた髪を切って重さを計らないと魂が宿ったのかわからないでしょ」

とニコニコしながら言った。
そもそも髪が重くなっただけでもあり得ないことだと思ったけど、軽口なんて叩けない異様な笑顔でそいつはこっちを見ていた。

計ったよ、重さ。

そいつは笑顔を貼り付けたまま言った。
俺はむしょうにその話を聞きたくなくて何も言わず教室を飛び出した。
少ししてチャイムが鳴ったので恐る恐る教室に戻ったけれどそいつはこちらを見向きもしないで席に就いていた。

結論からいうと、そいつとはその日から今日まで会っていない。
翌日から病欠で学校を休み一月程して転校していった。
そいつの病欠三日目に家が割りと近かったことがあってプリントを届けるよう言われて俺はそいつの家に行ったが玄関から顔を出したのはそいつの母親だった。

あまり機嫌の良い雰囲気ではなくあしらう様に対応されたが俺はどうしても気になってそいつの母親におばあさんの部屋に人形があるって聞いたんですけどと切り出した。
その母親は少し眉間に皺を寄せて言った

「うちにおばあちゃんなんか住んでないし部屋も無い」

そのまま締め出されるように戸を閉められた。
未だになんだかよくわからんけど今まで一番気味悪かった体験。

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