里帰りで帰ってきた姉ちゃんが話してくれた話。
姉ちゃんは俺がビビりだと信じて疑わなくて、色々と怖い話をしてくる。
そのほとんどが実体験だ。
うちは古くから曰く付きの家で、女ばかり霊感が強い。
だから俺は幽霊の類は見たことないのだが、姉ちゃんは昔から変わっていた。
姉ちゃんは友人達と大学裏の山へ”肝試し”に行くことにしたらしい。
そこは徒歩で20分も歩けば山頂に着き、小さな神社と茶屋がある。
茶屋の団子が旨いからと、大学をサボっては登山して食べに行っていたそうだ。
その日の夕方、大学に女ばかり5人集まって山を登り始めた。
小さくても山だ。
参道の階段以外は鬱蒼とした森。
日は完全に落ちて真っ暗の中、姉ちゃん自慢の懐中電灯のライトを頼りに歩いた。
半分も行くと、町の明かりが遥か下に見えて綺麗だったそうだ。
みんなで「夜景が綺麗だね~」なんて言っていたら、「君たち」と男の声がした。
ギョッとして声がした方を見ると、参道の脇の森から登山服を着た中年のおじさんが現れた。
「君たち、今日はお祭りかい?」
「違うよ。おじさん、ここで何してるの?」
姉ちゃんが尋ねた。
「賑やかだからね。おじさん、お祭りかと思ったよ。おじさんかい?おじさんは・・・」
おじさんは、ぼんやりと町を見下ろしていた。
姉ちゃん達はおじさんが幽霊かと思ったが、特に透けていないから安心したらしい。
「おじさん、皆と山を登ったんだけど落ちちゃったんだ。
気付いたら寝てたみたいでね。賑やかだからここまで来たんだよ。おじさん、帰ろうかな・・・」
少し言動に不気味さを感じて、姉ちゃん達は黙った。
しかし、細かいことを気にしない姉ちゃんは、
「おじさん、怪我してないの?」
と、普通に話しかけた。
「え?あれ、平気だなぁ」
「良かったじゃん!じゃあ、私が照らしてあげるから気を付けて下りなよ。今度は落ちないでね」
と、冗談まで言って。
おじさんも、軽く笑って降りて行った。
みんなでおじさんを見送り、山頂まで行ったが幽霊は出なかったそうだ。
・・・という話を母さんにしたという姉ちゃん。
そしたら母さんが、
「それ、○○山でしょ?私の友達もそのおじさんに会ったって」
と言い出したそうだ。
おじさん、やっぱり同じような事を言って山を下るんだってさ。
現れた場所も同じだった。
「あれ、おじさん普通に会話するから全然分かんなかったよね。みんな見たし」
姉ちゃんはそう言うと、俺に
「じゃ、行こうか♪」
と、車の鍵を出して見せるから怖かった。
結局、車に乗せられてしまった。
しかし行き先はコンビニで、なんか色々買わされただけだったが・・・。
昔から変わっていた姉ちゃんだけど、未だに相変わらずみたいだ。