きみ、ダイチ君?

きみ、ダイチ君? 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

昔、近所にキ〇ガイおじさんって呼ばれる人が居た。
40、50歳くらいかなと思うけど、はっきりとは分からない。
子供の頃って、大人は全部ひっくるめて大人で、見た目で年齢は良く分からなかった。

おじさんは道端で会うと真っ赤な顔でこちらを睨んでくる。
挨拶はしちゃいけないし、目も合わせちゃいけない。
目が合うと追いかけてくるから、絶対捕まっちゃいけない。

なんでそんな人が野放しになってたのか理解できない。
お母さんにも聞いてみたけど、触れちゃいけない話題みたいな扱いで、とにかく関わるなとだけ言われた。

そんな中、恐れていた事態は起きて、1年くらい前に引っ越してきた女の子が被害にあった。
当然その子の両親は激怒して、おじさん宅に怒鳴りこんだ。
子供心におじさんが居なくなるのかと期待した。

しかし、結果おじさんは今まで通り徘徊を続け、被害者一家は引っ越していった。
大人たちは頼りにならないと、子供達である作戦を立てた。
そうは言っても子供レベルの策だったが、相手も同レベルだった。

作戦は簡単でおとりになった俺が走って逃げ、追いかけてきたおじさんをロープで転ばせるというものだ。
作戦は大成功。
成功し過ぎて、おじさんは車いすでの生活を余儀なくされた。
何らかの事情でノータッチだった大人たちも、子供のやったことでは仕方ないと犯人探しには消極的だった。

それからもおじさんは車いすで徘徊を続けたが、上手く操作出来ないようで逃げるのは容易かった。
中学、高校と進学し、通学路や生活圏も変わったため、おじさんを見ることも無くなって行った。

あれから20年、結婚して子供も出来、子育てに両親の協力を得るため地元に帰ってきた。
そのまま二世帯住宅を建て、子供も小学校に通うようになった頃、ある噂を聞いた。
子供を追い回す、電動車いすに乗ったおじさんが近所に居る。

何をするわけでも無いが、近くまで来ると名前を聞いてくるらしい。

「きみ、ダイチ君?」

ダイチは俺の名前だ。
あの事件から俺をずっと探していたこと、俺の名前を知っていること、これからその道を娘が通学で使うこと。
全てが頭の中でグルグルと回って、気が付くと凄い量の冷や汗をかいていた。

これからのことを考えたくない・・・

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