オレの大学生のころの話を聞いてくれ。
オレが大学生のころ、友達の女の子が覗きに困ってると言っていた。
なんでも向かいのマンションの窓からずっとこっちを見てるんだそうだ。
この2日くらい家に帰って窓の外を見ると男が見てるらしい。
「そりゃ、気持ち悪いね。オレがガツンと言ってやるよ!」
なんて頼もしい事を言ってまんまと彼女の家に上がり込んだ。
彼女の部屋はマンションの裏側で、窓からは裏手のマンションが見えるんだが、窓空けてすぐは駐車場がひらけてて、すこし離れて向かいにマンションがあった。
「あ、今日も見てる・・・。」
あんまり目がよくないので、よく目をこらしてみると、ちょうど向かいにあたる部屋から確かに男がこっちを見てるように見える。
座ってるような感じでじっとしてた。
「うわ、本当だ。ってかあれ覗いてんの?」
「違うかな?でもこの2~3日ずっとこっち見てるから気持ち悪くて・・・。」
オレはもっと近いところからあからさまに覗いてるのを想像してたので、そうしたら怒鳴りつけてやろうかとも思ったけど、これはちょっと怒鳴りつけるって感じでもない。遠いし。
オレは男にむけて、手でシッシッってジェスチャーをしてみたんだけど、男は無反応だった。
「ん~、変なやつ・・・。部屋行って気持ち悪いからこっち見んなって言ってこようか?」
「いいよ、怖いから。ありがと。もうしばらく窓開けないようにする。」
んで、その日はいい雰囲気になって彼女の家に泊まった。
その日から何日かは彼女の家に通ってたんだけど、男は相変わらずこっちを見てる。
でもおかしいのは真夜中でも電気もつけずにこっちを見てるようだし、朝起きて窓を開けてもやっぱりそいつは窓の外を見てた。
いい加減気味が悪くなったので、部屋を訪ねて文句でも言おうと思ったが、彼女が怖いからやめろと言うので警察に通報した。
警察は一応話しを聞いてみると言ってくれた。
それからその部屋にはカーテンがしめられて、警察がちゃんと注意してくれたんだと思って早く電話すればよかったと反省した。
それから彼女とは付き合うようになって、2~3ヶ月経った頃だったろうか。
彼女の家に警察が訪ねてきた。
なんでも向かいのマンションで自殺があったそうなんだが、その自殺した人間というのが、あの彼女の部屋のむかいに見える部屋の男だったそうだ。
以前通報があったので話を聞きにきたということだった。
その時はオレもいて、警察の人に話を聞いたんだけど、どうやらこっちをずっと覗いてた男はロフトみたいなとこのパイプに縄をくくって首をつってたらしい。
ずっと覗いてると思ってたのは既に息絶えて縄でぶら下がってた男だった。
完全にぶら下がらずに、座るような格好で首をつってたのでこっちを見てるように見えたとのことだった。
それを聞いて背筋がゾッとした。
彼女も怖がって、その日は彼女の家を出てラブホテルに泊まった。
その夜もなんか電気消すのとかも怖くて、あまり考えないようにした。
次の日、学校で友達にその話をした。
「かくかくしかじかで~警察来て~、んで自殺だったんだって!」
「それマジで?メッチャ怖いじゃん。」
「だろ?その日彼女ん家いられなくてラブホ行ったよ。」
「っていうか、カーテン誰が閉めたの?」
って言われて背筋がまたゾッとした。
そうだよ。オレが通報した後、カーテン閉まったじゃん・・・。
その後すぐ警察に電話して、その事を話した。
オレの通報を聞いた警官の話では、一応部屋を訪ねはしたが、応答がなかったのですぐ帰ったそうだ。
「カーテン本当に開いてたの?隙間からかと思ってたよ。」
と刑事が言ってた。
オレの思い違いだっけ・・・? 彼女に確認しようかと思ったけどやめた。