私が幼稚園にあがる前のことです。
私の母は本当の母親ではなく、父が連れてきた女の人でした。
本当の母は既に亡くなってたので・・今では仲がいい、とまではいきませんが普通の関係(無関心?)です。
でも当時私は母に嫌われていた。
んで私も母が嫌い、いや怖かった・・?
母にしたら私は本当の子供ではないし毛嫌いするのは仕方なかったかもしれません。
いくつの時か覚えてないのですが、幼稚園にあがる前だから3・4歳かな。
枯葉が庭に目立つ秋になると急に母がしつけに厳しくなりました。
それまでは私の行動に関してはジトーッと見たり無視したり、ジュースなどこぼすと彼女が強行してぞうきんで拭くようなことが多かったのに、私自身に指示してやらせるようになりました。
一番驚いたのは私に絵本を読むようになってくれたことです。
私は嬉しかった。
きっと一緒にいることで私にやっと興味をもってくれたんだ、と思って嬉しかったんでしょう。
そんな日々が2ヶ月ほど続きました。
冬がやってきて確か雪もふったような。
冬になるとますます母の干渉が多くなって嬉しかったことは嬉しかったんですが、なんだか変な質問を堅くするようにもなってきて、それはあんまり嬉しくなかった。
あなたの名前は?とか今日の天気は?とか・・
その時私は意図がわかってなかったけれど、実際会場に連れて行かれて面接を受けて「ああこのために・・?」と理解しました。
その面接がなんなのかは最近受験シーズンの度に思い出して「そっかお受験だった・・?」と解釈してます。
これから記すのはその面接の内容なんですが・・
子供の私にとってはなんだか、それこそ洒落にならないほど怖かったんですよ。
今思うとここが幼稚園?と思うほど立派で、白いあの建物が幼稚園だったらしい。
私が小さかったから余計大きく見えたかもしれないけど、あの大きさは、高さは尋常じゃなかったはず。
ビルみたいな大きさではなくて、不気味に大きいんです。
イメージ的には簡単な造りの大きな宮殿で、大体真っ白だから・・なーんか変な感じでした。
その建物の中に入っていく私と母はいつも着る服とは全然違う立派な服でした。
私なんて普段大した服を着させてもらってなかったので、急に窮屈な服を着ると少し息苦しかった^^;
母に「ここ何屋さん?」とか聞いた気がするけど、母はただ遠くを見てキリッとしてるだけで、その質問には答えない代わりに「ちゃんとするのよ」「ハキハキしなさい」そしてまた「今日の天気は?」その日の天気は小雨でした。
小雨なんて言葉は知らなかったから「ちょっとだけ雨降ってる」と答えたら「少し、雨が、降って、います」と訂正されたことは覚えてる。
案内の女の人みたいなのに誘導されると他の親子もいて椅子に座っていました。
私たちはその隣に座ります。
親子の表情は穏やかでした。
悪い意味じゃないんですが、まるで天皇家の人たちのような笑顔で。
その笑顔と母の表情が随分対照的だった・・その親子は男の人に呼ばれると白いドアの中にペコペコしながら入ってった。
しばらくすると出てきて、私たちにもにっこり笑って出ていくと今度は私たちが呼ばれたらしく母に促されながら白いドアの中に入っていきました。
男の人たちが3人いた。
風貌はあまり覚えていないけど表情は覚えてます。
左の人は無表情で、真ん中の人はまたにっこりしてる、右の人は私たちのことを睨んでました。
隣になぜかテレビがあった。
母と面接官のやりとりは興味が特になかったのであんまり覚えてません。
なので、私と面接官のやりとりをかきます。
面接官「お名前は?」
私「○○です」
面「どこにすんでますか?」
私「□□です」
面「今日のお天気はどうでしたか?」
私「(あ、さっきと同じ)ちょっと・・」
ここで母に訂正されたのを思い出した。
でもちょっと・・って言っちゃった・・とあせってすぐに「少し雨が降ってる・・」と言い直しました。
母の表情は見たくなかった。
この後面接官が変なこと聞いてきた。
面「○○さんは踊れますか?」
私「・・?」
なんとなく、踊れないと答えちゃいけない気がして「お・・踊れます」
面「そうですか、踊れるんですねえ^^」
無表情の面接官がテレビのスイッチをつけてなんかのビデオを再生したっぽい・・
テレビの画面にはまるでNH●の体操みたいに女の人が3人いて、変な動きをしてました。
今思うとあのバレエのボレロっぽい動きが、もっと激しくなってるような感じ・・
一番おかしかったのは体をぐにゃぐや揺り動かしてる動き、変なの。
なんと面接官は「じゃあ○○さん、この女の人たちの動きと同じ動きをしてください。」と言ったんです!
さすがにびっくりしましたが、踊れるとか言っちゃったし、顔は見てないけど、母が見てる・・「はい」と言って立ち、私は体を振り回しながら一心不乱にその女の人達に合わせて踊ろうとしたけど、なんせ3・4歳じゃあ全然おいつかないし・・あせりました。
無表情の男の人はフアハハといった感じで笑ってました。
幼心にも恥ずかしさで傷つきました・・
5分ほど踊らされてからまた座ると次にテレビの画面にぼっさぼっさの髪と大きい目の男の人が映りました。
その画面の中の男の人はただの写真かと思うほど30秒ほどだまりこくっていたかと思ったら急に意味不明な言葉を発した。
「アイウギャオガー!ウエウガオラー!」
みたいな?そしてまただまりこくった。
そしたら面接官たちが私の顔を一斉に見てきました。
何かを求めてる・・もしかしてあの画面の男の人は私に質問してたの?でもなんていったかわかんないよ・・どうしよう・・と困ったので、ちょっと母に助けを求めようと母の顔を振り向いた。
母は・・キリッと面接官たちに顔を向けていたけど目が私を見ていて、睨みつけていて「早く!答えな!」感がジワジワと伝わってきた。私は泣きそうでした。
大人4人が何かを自分に求めているけど答えられない。
怖い!なんなのかわかんない!画面の中の男の人も私のことを凝視していました。
また写真かと思ったら口をモゴモゴさせていたので写真ではなかったみたい・・とまあそんなことはどうでもいいですね。
やっとこさで口をあけたんですが「あ・・・・」と言う事しかできませんでした。
面接官達はフッとこっちを見るのをやめ、ジーッと私を睨んでいた面接官が椅子のしたからビンをとりだして私に近づいてきました。
母のため息が隣で聞こえた気がしました。
「あの人が言ったこと、わからないんですか」
あの人=ビデオの人?
私が「・・はい」と答えるとビンの口を私の鼻の前にズンとつきだしてきて「なんのにおいですか?」と聞いてきた。
嗅ぐのが怖かったけど仕方なく嗅いだ。
今の今までもあんな臭いのを嗅いだのはそれっきりです。
すごーく臭い、生臭い、魚屋の匂いと糞尿がまざったようなひっどい匂いでした。
仕方ないのでまずいと思ったけど「・・うんこ・・?の・・」と答えたら面接官の顔が一気に赤くなって、次の瞬間私の上でビンをさかさまに。
冷たい感触が一気に背中をつたりました。かけられたのは・・ただの透明な水?でも凄く臭い。
面接官は口々に「しんじられん!」「なんていやなこだ!」とか「ばかだ!」と言い始めて、当時私にはわからないような言葉も使って色々言ってたようですが私には意味はわからなかった。
ただひたすら怖くて・・
あんな普通に静かだった面接官達が大声で自分のことを罵倒してる・・
しかも自分はびしょぬれ。
んでもってとってもくさい!
面接官達は散々私のことを悪く言った後、また冷静になっててコホンと咳払いをしてから母に「残念ですが、○○さんは私たちの幼稚園には入れません、さようなら」といった。
そこで私はやっとここが幼稚園だったのかとわかる。
顔はみなかったけど母の声色はこわばっていて、「あ・・あの!でも!こんな内容なんてかいてませんでしたよ!どうしてですか!どうして教えてくれなかったなんですか!そしたら準備したのに!」みたいなことを言っていました。
最後はドアがノックされ、お時間です、と言われて強制退場しました。
玄関まで出ると、外は小雨からどしゃぶりになってた。母が私にやっと話しかけました。
「○○ちゃん」
「お母さんごめんなさい、あのね」
「○○ちゃん」
「・・なに?」
「くさいわ」
「・・・」
「よかったわね、雨が降ってるから洗いなさい」
「・・・うん」
私は母に無理矢理出される前に外に出て雨にうたれながらそのにおいを消そうと必死にごしごし洗ったりしてた。
お母さん、私ができなかったから、泣いちゃうかも・・と思って洗うそぶりを見せながら母の方をチラッとみたら、母は泣いてなかった。ただ私の方を睨んでただけ。
私は次の日、案の定風邪を引きました。
その面接のことを母は父に言わなかったので、私も父にはその変な面接のことは言いませんでした。
もうこれは何十年も前の話です。
たまにふと思い出して母にあれはなんのお受験だったの?
と聞いたりもしますが母は「そんなの覚えてない」の一点張り。
多分嘘ついてます。
私の被害妄想かもしれませんが、母は私をどっかの宗教の幼稚園の中にいれようとしていた。
それで、私が邪魔だったからそこにいれて全て任せるつもりだったんでしょう。
しかも父に内緒で先に幼稚園にいれさせるつもりだった。
間違って入ってしまわなくて本当によかったです。
そしたらどんなことになっていたか・・というかあの面接でどんな受け答えをしてたら入学できるんだろうか・・謎・・