幽霊をみた(ひゃー–っ!)とか
心霊写真をとってしまった(うわぁー–っ!)とか、
あるいは霊が居るのがわかる(きゃー—-っ!ってうるさい!!)、というのはまったくない。
いまから書くことはオバケの仕業かなにかはわからないが、まぁ、怪現象ではあるとおもう。
学生時代に借りてたアパートでは何回か不思議なことがおこった。
アパートとはいっても2階建てのワンルーム・マンションってやつで、わたしがはいったときは新築されたばかりだった。
そこに住みはじめて2年ほどたった冬のある日のこと、アルバイトからかえってきてまずトイレに入ったわたしは、トイレの小窓が閉まっていることに気がついた。
いままで覚えているかぎりでは、これは閉めたことがない。
冬でも夏でも換気のために開け放しにしてある。
窓は内側にひっぱって倒して開ける形式のもので、かってにひとりでに閉まるというものではない。
またその窓は玄関扉と同じ面、すなわちひとが行き来する廊下がわについているのだが、だれかが外から閉めようとするならば、まずビスでとめられた網戸をはずさなくてはならないことになる。
もちろん、そんなことをしたような形跡はなかった。
変だな、とはおもったがまた開けていつものとおりにしておいた。
そして翌日。
やはりバイト先から夜うちへもどってくると、きのう開けたはずのトイレの窓がまたしまっている。
「おれはきのうちゃんとあけたはずだ。」
窓が閉まっているのをみつけた昨日からいままでのことをずっとおもいだしていた。
やはり開けている。
今朝も部屋を出るまえに開いているのを見ているではないか。
とおもった瞬間ほんとに総毛立った。
ブルっとふるえたのを覚えている。
しかし驚きはそれだけではなかった。
食事をしながらいろいろとこういうことが起こる可能性を考えてみたのだが、理にかなう答えは出ない。
そして、いやだったのだが、風呂にはいることにした。
ワンルームにしてはめずらしくユニットバスではなく、便所と風呂場はそれぞれ独立したものだった。
案外ひろい。
用意をしバスルームへはいると、目の角にくろいものがみえる。
うえのほう。
ふっと顔をあげると天井の真ん中に穴が開いている。
いや正確にいうならば、マンションのバスルームよくある、天井裏へ行くための穴をふさいでる蓋がずれていたのだ。
完全にずれて、直径50センチほどの隠しようのない真っ黒な穴が口を開けている。
わたしは怖いのを我慢して蓋をもとにもどすと風呂場から出た。
きのうは風呂に入っていない。
もしかして昨日からずっと開いていたのか、とかんがえるとまた恐ろしくなった。
またつぎの日の朝、わたしは懐中電灯を持って屋根裏をのぞいてみることにした。
椅子をバスルームへ持ち込み、その上に立つ。
しばらくかんがえてからきのう閉めた蓋をまた開け、なかを電灯で照らすが、とくに変わったところは見あたらない。
となりの部屋との境は鉄骨で完全にふさがれている。
密室といっていいだろう。
ちなみにわたしの部屋は2階にあった。
それから便所の窓が閉まることも、風呂場の天井の蓋がずれたりすることも、その後いっさいなかった。
ふたつめ。
これはいつごろだったかおぼえてはいないが、ともだちがおそくまでわたしの部屋に来ていて、帰ったあとの夜中のことだった。
寒かったように記憶している。
机にすわってるととつぜん「くしゃん!」とおおきなくしゃみのおとがきこえた。
男の声である。
家のそとからきこえてきたのではなく、隣の部屋の人間がしたものでもなく、わたしの部屋の中でだれかがしたくしゃみのおとである。
よっぱらっていたのが一気にさめたが、なんとなくユーモラスなかんじがしたので怖くはなかった。
つぎ。大学年のころ1日に最低1回地震があった。
とはいっても揺れを感じているのはわたしだけで、「さいきん地震多くない?」とひとにたずねたり、あるいは部屋に友人が来ていて、
「いま地震あったな。」なんていっても「えっ、そうか?」なんて返されるだけ。
まあ、ごくちいさな揺れなので、わからないだけかともおもっていたのだが、その微震は1年ほどつづいた。
毎日。
そのうち忘れてしまったが、1年生になっておなじゼミにいた同学年の女の子にどういうわけだかこの話をしたら、「わたしも同じ経験をしてる。」という。
1年生の1年間毎日地震。
彼女も一人暮らしをしていたが、住んでいるアパートはわたしのところとはだいぶはなれていた。
この子の家とわたしの家のちょうど中間地点に自衛隊の駐屯地があったのだが、そこの地下で何か実験でもしていたのでは?と二人で言ってた(笑)。