洒落にならないくらい怖いかっていうと、たいしたことのない話だと思う。
まぁ、適当に流し読みしてください。
私が小学校低学年頃の話。20年ほど前かな。
夏休みが終わって間もなく、親戚の不幸で両親の実家(漁村に近い港町)に急きょ行かなければならなくなった。
行事が落ち着き、とりあえず一段落。
学校もあるので足早に挨拶を済ませて、祖父母の家に一泊してから帰ることになった。
港町なので、毎日のように魚介類がごはんのおかずにのぼる。
その日、祖母がたくさんのサンマ(かなりでかかったと思う)が入ったビニール袋を提げて帰ってきた。
祖母は魚介類に関しては近くのスーパーなどで買うことはせず、夕食時になるとフラッと船場に行って顔馴染みの漁師から獲物を分けてもらうことを常としていたのだった。
母と祖母が台所に立ち
「塩焼きにしようか」
「これは刺身にしょうか」
などと話す声を聞きながら、私はテレビを眺めていた。
それは突然のことだった。
「ちょっと来て!」
母の声。
私は台所に飛んだ。
「サンマを下ろそうとしたら…」
母が言うには、サンマを下ろそうと腹に切り込みを入れたところ内蔵がドロドロに溶け出し、猛烈な勢いで流れ出してしまったというのだ。
確かに、母が見せてくれたサンマの腹には内臓は一切詰まっていなかった。
内蔵のあった場所だけがぽっかりと空間をつくっていた。
気味悪く思ったので、残りのサンマも下ろしてみると、十数匹のサンマすべての内臓がドロドロに溶けていたのであった。
サンマを誰からもらったのか、と祖母に聞くと
「浜辺で、浴衣を着た小さな女の子からもらった」
と言う。
だが、どこの子どもかは祖母は分からなかったそうだ。
小さな村なので村民同士顔が知れ渡っているのだが村には当時、小さな女の子はひとりも住んでいなかった(中学生ならいたけど)。
祖母にサンマをくれた女の子は何者だったのだろう。
そして、サンマはどうして内臓がドロドロに溶けていたのだろう。
ちなみに、件のサンマは祖母の
「食べれるから食べれるから」
の一言で全部カラアゲにされたが喜んで食べたのはあのとき家にいなかった父とじいさんだけだった。
…漁村なので海難事故が今まで一件も起きたことがないなんてのはないと思うけど。