修学旅行の話。
小学校2年生の修学旅行で、山に登ることになった。
4クラスで一クラス30人くらいだから120人・・・
それに引率の先生含めると125人ほど(保健の先生含む)
教師になったばかりの新人の先生、Yさんは一番最後の生徒について、最後尾を歩いていた。
ちょうど半ばほどで「どろどろどろ・・・」と滝の音が聞こえる。
滝の上の道を歩いているようだった。滝の音は凄まじく、周りの音を掻き消すほどだ。
高所が苦手なYさんは、なるべく下を見ないように歩いた。
しかし夏の暑さに、滝から吹き上げる風は心地いい。
ふとYさんは気付いた。
目の前に歩いている生徒が、前の集団から離れてしまっている。
まぁ、道は一本で迷うことも無いし、その生徒をせかすのも酷だろうと思いゆったり歩いていった。
しばらく行くと、上の道が切れて、晴れの空が覗いている。
「〇〇ちゃん、ほら、あと少しだぞ。もう少しでてっぺんだ」
山頂に着くと、おかしなことに誰もいない。
Yさんは、みんなに置いていかれたのかと思った。
「〇〇ちゃん、みんないないね。はぐれちゃったのかな」
「まだ下にいると思うよ、先生」
Yさんは〇〇ちゃんの行っていることがよく分からなかった。
「下って?〇〇ちゃん、みんながいる場所知ってるの?」
「うん。滝の下。」
ゆっくりと、〇〇ちゃんがYさんの方へ向く。
「邪魔なんだもん」
Yさんが見た最後の光景は、〇〇ちゃんの無邪気な笑顔だった。
翌日、山の中腹で泣いている女の子が発見された。
泥だらけで、泣いていたのだという。
「Y先生が、Y先生が、みんなを滝に突き落としたの」
何を聞いても、それを繰り返すのみだった。
後日、滝壷から123人の遺体が見つかった。
〇〇ちゃんは、ことし中学へ入学する。