シンジラレナーイ!

シンジラレナーイ! 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは、俺が小学4~5年生だった頃の話。

ある日のこと、母と近くのスーパーに買い物に出かけた。
すると、近所のおばちゃんにばったり会った。
そこからは、母とそのおばちゃんの立ち話が始まった・・・。
おばちゃんの立ち話は長いのだ。

俺は手持ち無沙汰となり、母の目の届く範囲でぶらぶらしていた。
近くには交差点があり、ふと見ると、なんだか影が薄い若い女の人がいる。
“影が薄い”というのはあくまで第一印象で、顔ははっきりと見えなくて、黒いモヤのようなものが女の人の周りに漂っている感じがした。

変な人だな~と思った俺は、さらによく見てみた。
すると、その女の人は半透明だった。
女の人の向こう側にあるブロック塀が見えているのだ。

俺は急いで母のところに戻り、「かーちゃん、あの女の人、変じゃない?」と指差した。
母は立ち話に夢中だったが、俺の指を差している方を見るや、「はあ?誰もいないじゃない?」と言う。
そして母は、また立ち話を始めた。
それ聞いた俺は、なぜかテンションが上がってしまう。

「やべぇー!本物の幽霊なんて初めて見たー!」と。

俺はその幽霊だろう女の人の近くに行き、顔まで30センチくらいのところまで大接近してみた。
しかし顔をじろじろと見ていても、女の人はじーっと地面を見つめて俯いている。
顔の前で手をひらひらさせても、ずっと俯いたままで何の反応もない。

調子に乗った俺は、映画やドラマでよくある“幽霊の体を通り抜ける”というのをしたくてウズウズしてきた。
そして、まず手を通してみようと思い、女の人の顔をめがけて軽くグーパンチをくりだした。

・・・が、なぜか俺のグーパンチは女の人を通り抜けなくて、ほっぺたにクリーンヒットしてしまった。

『あっ、やべぇ!』と思った時にはもう遅くて、俯いていた女の人がギギギ・・・という音がしそうなくらい、ゆっくりと俺を睨んできた。

そして次の瞬間、女の人は
「ナニスンノヨ!シンジラレナーイ!」
と大絶叫した。

俺はパニックになり、『やべぇ!生きてる人だったんだ!怒られる!』と思う。
女の人は静かに俯いていたさっきまでとは一変し、「シンジラレナーイ!ムカツク!」と叫び続ける。

母にも聞こえて『これは怒られるな』と思うが、母の方を見るも相変わらず立ち話に夢中だった。
『あれ?かーちゃん気付いてない?』と、もう一度女の人の方を見ると、居なくなっていた。

さっきまで大絶叫していたのに。
その後、『あー良かった。やっぱり幽霊だったんだ』と思った俺は、立ち話を終えた母と買い物に行った。

後日、同じ場所を通りかかった時、あの女の人がいた。
この前と同じように、影が薄くて半透明な状態で。
俺は思わず「あっ・・・」と声を出すと、女の人はチラッとこっち見て、「ちっ」と舌打ちをして足元からゆっくりと消えていった。

幽霊でも人を殴っちゃいかんね、びっくりするから。

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