今度は、電兄の体験談を聞いたことがあるのでその話を書きます。
知り合った初めの辺り、電兄に「マジで幽霊見えてるんスか?」と尋ねたことがある。
電兄は、「感じるよ」って答えたただけで「見える」って言い方はしなかった。
幽霊の感じ方はそのときの状況とか体調によって違うらしい。
目で見えたり、気配をかんじたり、声(音)が聞こえたり…様々。
「見える時」は決まって、3D眼鏡をかけて飛び出す絵を見た時みたいに周囲の景色から妙に浮いてる感じで見えるらしい。
でも実は見るのは苦手(?)な方だとか。
この時ついでに聞いたのだが、電兄は左耳が悪いらしい。(病気の名前は忘れた。難聴っぽい感じ。)
電兄が喋る時、妙に語尾を伸ばす癖があるのはそのせいなんだとか。
電兄は何か居るのが“たまたま”分かることはあっても、よく霊能者がやるように、狙って霊を見て訴えを聞くようなことは出来ないとのことだった。
「霊の何が聞こえるんですか?」
「霊の声とか、霊の気配が聞こえる。」
電兄の話はたまに意味不明だったりする。
感じ方を口で説明するのが難しいのは承知しているので
「じゃあ、見えるのと聞こえるのだったらどっちが怖い?」と尋ねたら。
「聞こえるほう。」
と即答された。
具体的に怖かった体験を聞いたら、こんなことを語られた。
電兄が学校で授業中のこと。
後ろから名前を呼ばれて振り返った。
ひそひそ話をする時みたいに、小さい声で真後ろから。
電兄の後ろには仲が良い女の子が座ってて、その子が呼んだのだと思った。
なんだろうと思って女の子に軽く笑い掛けた時、講師に注意されたので前に向き直った。
授業に集中し、しばらくするとまた名前を呼ばれる。真後ろから。
同じように振り返ったら、後ろの女の子から
「また注意されるよ、前向きなよ」
って苦笑混じりに言われたらしい。
電兄は、「からかわれた」と思って、それからまた何度か後ろから名前を呼ばれたけど授業が終わるまで無視したそうだ。
授業が終わって、電兄は女の子に何のつもりだったのかと尋ねた。
こういう話のお約束だけど、女の子は電兄の名前など一度も呼んでなかったらしい。
当然電兄はそれを疑うんだけど、途中で嫌なことに気付いてしまった。
電兄の耳は左が聞こえ辛い。
そのため、どうしても耳の感覚が右に片寄ってしまうそうだ。
人は、両方の耳で音を拾い、同時に、“無意識のうちに”その音源の位置を特定する。
しかし、左耳が悪い(=右耳が主に音を拾う)電兄は音源の位置を“無意識に”やや右寄りに感じてしまう。
極端な例では、左から名前を呼ばれて右に振り向くこともあったらしい。
あなたも片耳を塞いでみれば、これに近い感覚を味わえると思う。
完全にではないにせよ、音源の場所の特定があやふやになるだろう。
それをふまえてさっきの話に戻る。
電兄は、さっき真後ろから名前を呼ばれたと感じた。“無意識”に。
普通だったら、電兄の耳の性質上、音源の位置を真後ろに特定することはまず無い。
では何故、電兄は真後ろから呼ばれたと感じたのだろうか。
「俺は、それが人間の声じゃなかったからだと思うよー。」
そう言った電兄は全く怖そうじゃなかった。
怖いと思った話を聞かせろと言ったのに。
そう言うと、電兄は
「よく考えてみろ、後ろの女の子の気持ちを。」
電兄の後ろの女の子は、何故か授業中に電兄が突然振り返ってニヤニヤする様子を2度も見せられたのだ。
「男がいきなりニヤニヤして来るんだよー。
どう考えても俺、気持ち悪いじゃん。
その時、その女の子にどう思われたか考えると、今でもゾッとする。」
だから聞こえるタイプの幽霊は怖いと電兄は言う。
……そっちかよ!!!orz
「そういや、どうして幽霊は俺の名前知ってたんだろうなー。
あと、何のために何回も俺を呼んだんだろー。」
この話を聞いた後、帰りがけに電兄が言ったのを聞いてなんか凄く鳥肌が立った。