いつもと違う父

いつもと違う父 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは私が小学生の頃、実際に体験した話です。

当時小学5年生だった私は、自宅から徒歩で15分ほど離れたいとこの家へ遊びに行っていました。
いとこの家はさほど離れていないこともあって、休日なんかにはしょっちゅう行き来しており、この日も休日で遊びに行っていたのです。
ちなみにいとこは私より2歳年下で、父方の親戚です。

そうして丸1日いとこと遊び、夕食までごちそうになった頃には夜の8時を過ぎていました。
翌日が休みならそのまま泊まることもあったのですが、生憎翌日は月曜日で学校もあったため、帰らざるを得ません。
そこで父に迎えに来てほしいと電話をすることにしました。

当時はまだ携帯電話なんてものはなく家電だったのですが、いとこの家から電話をするとすぐに父が出てくれたので
「迎えに来て。」
と頼みました。

ところがいつもなら自家用車で快く迎えに来てくれるはずが、この日に限って父は
「自分で帰って来なさい。」
と言うばかりです。

しかし小学校5年生の私には夜8時も過ぎると深夜と言っても良い時間でしたから、1人で真っ暗な夜道を帰宅する勇気はありません。
なので電話口で半泣きになりながら、父に迎えに来てほしいと何度も頼み込んだのです。
でも結局父は最後まで自分で遊びに行ったのだし、1人で帰って来なさいと繰り返すばかりで、最後には電話を切られてしまいました。

こうして1人で帰ることになったのですが…
家の明かりや、人や車の行き来もまだある時間帯とは言え、5年生だった私にはかなり心細い帰り道です。
もはや恐怖心よりも父に対して腹立たしい思いのほうが大きく、いつもは迎えに来てくれるのに何で今日は迎えに来てくれないんだ…とすごく腹を立てていたのを覚えています。
そのうち早く自宅に帰り着きたいという思いと同時に、父と顔を合わせるのが嫌だから家には帰りたくないという思いまで沸き上がり、必然的に帰途への足取りも重くなってきます。

と、私が覚えているのはここまでです。
というかこれ以降、家に帰り着くまでの記憶だけがすっぽり抜けているのです。

次の記憶は外が明るくなった時に自宅の門の前に立っていたところです。
夜8時過ぎにいとこの家を出て、いくらゆっくり歩いても30分もかからない道のりなのに、なぜか気が付くと朝になっていたのです。

しかもその後、家に入って両親と話をした時にさらに不可解な出来事がありました。

両親は私がてっきり親戚の家に泊まってきたと思っていたらしく、朝帰ってきたことも特におかしいとは感じていませんでした。
ただ私が学校へ行く準備もあるし、そろそろいとこの家へ迎えに行こうかと思っていたところだと言うのです。

父は
「なぜ電話をしてこなかったんだ?電話してくれたら迎えに行ったのに。」
と言います。
しかしもちろん私はちゃんと電話をしていますし、それを父に言いました。
でも父も母も電話などなかったと首をかしげるばかりです。

両親は揃ってそんな冗談を言うタイプではないし、確かにいつもは迎えに来てくれるはずがこの日に限って断ると言うのもおかしな話です。

こうして私は電話をした、両親は電話なんてかかってきてないと言い合いになり、いとこの家に確認してもらったのです。
するととりあえず私が電話をしたことだけは確かだと言うことは分かってもらえましたが、最終的には私が電話をかけ間違ったんだろう、別の家へかけてしまったんだろうということで落ち着きました。

でも、あの時の電話の声は間違いなく父でしたし、私の名前を呼んでいた記憶もあります。
なのに父も母も電話なんてなかったと言い張ってますし、では私は一体誰と話をしていたのでしょうか。

そして夜8時過ぎから朝までの記憶が抜けている間、私はどこで何をしていたのでしょうか。
いまだにこの時のことが不可解でなりません。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い