ドアにぶつかるモノ

ドアにぶつかるモノ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

予定より少し遅れていたので、暗くなりかけていた。
まぁ、遅れても超過勤務手当てがつくので構わないのだが、暗くなる前に、あの不気味な家への配達を終わらせたいのが本音だった。

その家はドアの横に小窓がついていて、そこから郵便物を投函する。
大きい郵便物は入らないし、家の中で犬を飼ってるらしく、郵便物を入れようとすると犬が近寄ってくる。
ドアの小窓がついてる部分は、下部がすりガラスになっていて、犬がドアに体当たりしてくるのが見える。
裏手にまわると勝手口が板で封鎖してあって、すべての窓は雨戸が閉められている。
なんとなく気持ち悪くて、いつも郵便物を半分差し込んで早々に退散してた。

空模様も怪しくなってきたので、少しコースを変えて先にその家に向かうことにした。
いつもの通り、郵便物を小窓に差し込もうとした時、「ドンッ」ドアに大きな物がぶつかる音がした。
犬の体当たりの音にしては大きい。
犬が吠える声もしないし…何だろう?
すりガラスを見てみた。
黒いシルエットが後ろに後退りしている。
犬じゃないみたいだ。

そう思った瞬間、「ドンッ」
すりガラスに張りつく黒いもの…人間だ!
髪の長い女の顔。
すりガラスごしでもわかる。
あわてて逃げた。

動揺しながら配達を全部終えて局に戻る途中、あることに気付いた。
あれは、あの女がドアにぶつかってきたんじゃない。
誰かがあの女をドアに投げつけていたんだと。

犯罪の匂いがしたので、局に戻って上司に報告した。
上司から返ってきた言葉は、

「あそこ半年前に転居届出てるぞ。知らなかったのか?」

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