ミナミ

ミナミ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

今から8年前の話です。当時、私は大学生でした。
学校にも行かず、かといってやることもなく・・ただただ暇をつぶしする毎日を送っていました。
あんまり暇で、友達も少なかったんで、何となくですが携帯のコミュニティサイトに登録しました。
そのサイトは簡単なプロフつきのHPを作って、コメントを通して男女問わずコミュニケーションをとろうというものでした。
私は、当時、暇なので本ばかり読んでて、小説の書評や創作文をHPにのせることにしました。
しばらくは、誰もアクセスしてくれませんでした。
たまに、小説好きな男から、「俺も太宰治好きだぜ」「書評読みましたが、読み違えてるところがあると思います」
とかって他愛もないコメントが来るくらいでした。

私は男なので、女性から誰かアクセスしてこないかなぁと期待していました。
で、2ヶ月くらいHPを更新続けていたときに、女性からアクセスがあり、
「わたしも中島みゆき好きです。これからも中島みゆきのことをいっぱい話しましょう」のようなコメントがきました。
その前に、私は中島みゆきの詩のすばらしさをHPに書いていました。
私はうれしくて、そのコメントの女性のプロフィールを早速見ました。
その人は30歳、女性としかプロフにはのせてなくて、HPをのぞくと、中島みゆきのことや日々の日記を書いていました。
その人の日記を読んでいくと、なんだか悲観的な内容が多いように感じました。
「今日も失敗してみんなに迷惑かけちゃいました」とか
「また怒られました。もっと私がしっかりしていればみんな楽しくできるのに・・・」みたいな感じです。
私は、それでもコメントくれたことがうれしくて、相手のHPにコメントを残しました。

するとしばらくして相手からも返信のコメントがきて、何度かやりとりを続けるうちに本当の携帯のメアドを交換して、普段でも他愛もないことをメールでやりとりするようになりました。
で、メール友達といえる仲になりました。
その人の本当のプロフィールは年齢が31歳で1歳サバをよんでました。
しかも、離婚歴があるバツ一の女性でした。
その後、お互いの写真を交換しました。
写真のその女性は、今で言うと、ハリセンボンの痩せてる方を少し美人にした感じでした。
とても弱々しい感じでした。私はその人にはタツヤと名乗っていました。
その人はミナミと名乗っていて、「タッチ」の話題もメールでよくしました。
タッちゃん、ミナミとお互い呼び合っていました。

私は、いろいろメールしていくうちに、何だがミナミのことを異性というより友達としてとても身近な年上のお姉さんのように感じていました。
ミナミはメールでもよく、「また失敗しました。ホント私はダメだぁ」とか悲観的な
内容が多かったです。
そんなとき、私は「失敗したら、さっさとオナニーして寝て明日がんばりましょう」とか年下にもかかわらず偉そうに下ネタで返信していました。

で、3ヶ月くらいメールをしあいながら、夏休みが来ました。
夏休みに私は帰省するというメールをすると、ミナミから「会えないかな」とうメールがきました。
私の実家とミナミの住んでるところはとなりの県で、かなり近くて帰省中に会うこともできました。
でも、私は、ミナミのことをかなり年上ということもあり、異性として意識もしてなかったし、ネット上のメル友だから会うなんてことは考えてもいませんでした。

だから「会うのはちょっと・・・ね。イメージ崩れるの嫌だし」という内容を返信しました。
するとミナミから「どうしても会っておきたい。別に付き合ってとか言わないから。一度だけタッちゃんに会っておきたいの」
というめずらしく主張する内容の返信がきました。
なんか私はその強気な言葉に苛立ってしまい、「会うとかないから。」と短くお断りのメールをしました。
するとミナミから返信はなくなりました。

そして帰省の日がきて新幹線に乗ってるとミナミからメールがきました。
「今日、帰省の日だよね。ごめんね。強引に会いたいなんか言って。怒ってるかな。でもどうしても1回だけ会っておきたいんだけどやっぱりダメかな」というような内容でした。
私は、しつこくて怒ってしまい、返信もしませんでした。
帰省中も、「ごめんね。お願いだからメールください。」という内容のメールが何回か来ましたが思いっきり無視しました。

で、その後しばらく私はそのままミナミのことを忘れてしまっていました。
メールもしませんでしたし、HPを更新することもしませんでした。
そして、半年くらいたったあと、HPは月額料金がかかっていたので解約しようと、久しぶりに自分のHPを開きました。
すると、前の帰省の前後ですが、ミナミからのコメントがたくさんありました。
ほとんどが、ごめんね。もう会おうなんていわないからメールください。といった内容でした。
そのコメントの数があまりに多かったので、私は少しビックリして、ミナミのHPを覗いてみました。

ミナミのHPを見て私は頭が真っ白になりました。

ミナミのHPのトップ画面には、「みなさん本当にありがとう。感謝感謝です・・・」の文字が大きくありました。
その文字の下に小さく、「ミナミの妹より皆さまへ」のリンク文字がありました。
そのリンク文字をクリックすると、長々とした文字がかかれたページが開きました。そこには、

「みなさま、私はミナミの妹です。ご存知のことと思いますが、姉(ミナミ)は亡くなりました。
姉は病気と前向きに戦い、安らかに最後を迎えられました。
病室でもずっと携帯をさわっていましたが、みなさんが励ましの言葉をいっぱいくれたので最後まで頑張れたのだと思います。
わたしは、姉が亡くなったあとに姉がこのHPでたくさんの人と言葉をかわしていたことを知りました。
どうか、心の片隅に姉のことを覚えていただけるとうれしいです。」

という内容でした。
そして、最後に「特にビスケットさんとタツヤさんは姉とたくさん仲良くしてくれてありがとうございます。」
とつづられていました。

私は、頭がはりさけそうになりました。
ミナミが亡くなっていることがショックで、嗚咽というより愕然としました。
しかも、ミナミが亡くなった時期は、私が帰省したすぐ後だったとわかり、私は取り返しのつかないことをしてしまいました。
ミナミが最後に会いたいと言った本当の意味を深く考えられなかった私は愚か者と思いました。
その後、私はミナミのメアドへ直接メールしました。

本当にごめんなさい。
私はあなたが病気とたたかい頑張ってることも知らずにひどいことをしてしまいました。
今はかなわないけど、ミナミさんに会いたい気持ちでいっぱいです。
本当にごめんなさい。
という内容を送りました。
するとミナミのアドレスから返信がきました。

「タツヤさん。はじめまして、ミナミの妹です。
タツヤさんとは直接メールしてたんですね。
メールの履歴を勝手に見ましたがなんだか最後にどうしてもタツヤさんに会いたいって内容ばかり送ってて、本当にタツヤさんには迷惑かけました。
タツヤさんはあやまることはないです。
こちらが妹としてあやまります。ごめんなさい。
メールありがとうございました。
次の墓参りのときにタツヤさんからメールがあったことを姉に伝えておきます」

といった内容でした。

以上です。すみません。
怖くもなく本当に他愛もない内容でしょうが読んでくれた人には感謝です。
ちなみに私は今、30歳で女の子持ちの一社会人です。
娘の名前は妻と相談してミナミと名付けました。
亡くなったミナミは、HP上でのペンネームで実際には別の名前だということです。
妻であるミナミの妹から教えてもらいました。

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