兵士の幽霊

兵士の幽霊 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

ガキの時分に、鍼灸師のジジイから聞いた話。
ちょっと変わった幽霊談です。

ニューギニアのあたりのある戦場でのこと。
大規模な戦闘をした部隊があって、その後、その部隊の前線基地に、 夜な夜な、死んだ兵隊たちが現われるようになったそうです。
彼らはいずれも、足がちゃんとあり、懐かしそうに 「よお!」とか言いながら、現われるのだそうです。
いずれも確かに戦死した連中ばかり。
神主の息子の兵士がまじないをやったり、お経をよめる兵士がお経を詠んだりしても、まったく効き目無し。

そのうち、ズカズカ上がり込んできて、貴重な飯をバクバク食う始末。
しかも、いきなり手がスルスルっと伸びて、木の実を取ったりして、明らかに化け物化している様子。
怖いやら迷惑やらで困っていたのですが、なんとも手の施しようが無い。

見るに見かねた中尉だか大尉だかの隊長さんが、幽霊たちが集まっているところへ、 ツカツカと歩いていって、いきなり大声で、

「全員、整列!」

と言うと、素直に整列したそう。そして、

「貴様らは、全員戦死した兵隊である。よってこの世にいてはならん。
全員あの世へ行って成仏するように。これは命令である!」

隊長が涙を流しながら言うと、幽霊たちは、しばらく呆然とした顔で佇んでいたが、 そのうち全員が泣き始め、やがてボロボロと土人形のように崩れていったそう。

あとにはその土だけが残り、彼らは二度と現われることはなかった。
兵隊たちはその土の大部分は現地に埋め、残りを少しづつ日本に持って帰って、供養したそうです。

「へんな幽霊だね」
と僕が言うと、ジジイは、
「日本人の幽霊でも、死んだ場所が変わると、ちょいと変わるんじゃい」
と言っておりました。

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