妖怪ワキモゲラ

妖怪ワキモゲラ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

この出来事は突拍子もないように思えるかも知れませんが事実です。
直後に詳細な記録をしてありますのでもちろん夢なんかではありません。

・・・・一人暮らしのためのワンルームで、ある軽率な発想が思わぬ恐怖を引き起こしたのでした・・・・。

今まで、なぜか多くの金縛り体験があった僕は、それに伴う霊体験も自分にとっては一種の研究材料でした。
そのときは確かに怖い、だけど、霊現象を紐(ひも)解くような興味深いヒントがあったりするわけです。
そのため、そのときは1ヶ月程何もなく平和に過ごしていた僕は少し霊体験を求めていたところがありました。

その日、早く寝た私は夜中にふと目を覚まし、テレビなどを見てくつろいでいました。
(そういえばここ1ヶ月位何もないな・・・。)という僕の思いは
(今日こそ何か起きればいいのに・・・)というものに変わっていました・・・。

さっそく僕は再び布団に入り、自ら金縛りになりそうな状態をつくり出すというか、説明が難しいけれども、体を受け身の状態にしていったわけです。
するとあれほど眠っていたのに急に眠気に襲われました。

(あぁ、これは来る・・・)

急な眠気は霊現象と関わりがあるのをなんとなく経験上わかっていました・・・・

「ベチャン!」

(ハッ)と僕は目を覚ましました。
ベランダに何か肉の塊が落ちたような音でした。

(あぁ寝てたのか・・・これは来るな・・・)

その音は普段聞くことがないような音でしたが特に気にしませんでした・・・・

・・・・・(来た!!)

バーンと金縛りになって驚いて目を覚ましました。
(やばい!!)なんと横向きに金縛りにかかっています!
こんな時後ろで何かをやられるケースが多く、まず、霊の姿を見られないことで価値(?)として低いこと、それになによりも、背後は正面よりもずっと怖いのです。

(何か来るのか・・・?)

そう思ったときにはすでに背中が何かの指にツツーっとなぞられていました。

(子供・・・・?)

指の感じからはよくわかりませんでしたが非常にくすぐったいです。
何度も何度も背中の中央を上から下へと絶え間なく伝うのです。

(これで解いたらなんにもならない)

と我慢していましたが、くすぐったくてもう我慢の限界です。

(もうだめだ!解こう!!)

そう思ったほんとにその瞬間!

「う゛ぁー!!」
「!!」

僕は本能的に一瞬で目を閉じました。
なんと頭の方向にあるベランダから私の足元まで凄いスピードで「それ」は走ってきて、僕を見て両手を軽く広げた格好で前に突き出し、叫んだのです!
もちろんベランダは鍵がかかっています。
月明かりに照らし出された「それ」はとてつもなく実感があり、誰かが部屋の中に入って来たと思うくらい、生物そのものでした。

姿は人間と似ていますがポーズが動物っぽい感じです。
身長はだいたい人間と同じ位、体格はがっしり、骨太って感じです。
半袖シャツのようなものと短パンのようなものを身に着けているようでした。
さらに叫び声の発音の感じから一瞬で(人間じゃない!)と思いました。
僕は寝たフリをしたわけです。
とっさにそれしか考えられなかったのです。

・・・・すると、なんと!「それ」は私の後ろに来て、添い寝をはじめたのです!
僕の頭の後ろに「それ」の顔がある・・・・「それ」の鼻息がはっきりと風となって僕の耳に規則的に当たります・・・・。

(うわぁ・・・どうしよう・・・・)

金縛りは非常に強く、解く気にすらなりません。
もし失敗したら・・・・・喰われるのではと思うと、とにかく刺激を与えないようにと考えていました。
すると今度は僕の肩に「それ」の腕が伸びてきて、なんと私のワキ毛を触りはじめたのです。
全く意味不明です。
・・・・指の感じは・・・とても太いです。
それよりも特徴的だったのは、その動きです。
ぎこちないその動き・・・知能の低そうな、動物的な動き・・・。
ワキ毛を触られてとてもくすぐったい・・・しかし喰われると思えば何でも我慢できる・・・はずだったのですが、あまりのくすぐったさにケイレンしそうになって、つい!!
僕はとっさに幽体の腕を抜いて(なぜか僕は金縛り中に、腕を「抜く」ことができるんです。)「それ」の指をつかんで後ろに軽く払ってしまったのです!!

(ヤバイ!喰われる!!!)

幽体の手を出してしまうなんて!・・・眠ったフリをしていたのがバレたか!
・・・「それ」も何か今の出来事に驚いたのか・・・それとも後ろで怒り狂っているのか・・・しばらく沈黙が続きました・・・・
僕は気が気ではありませんでした・・・

しばらくすると再び腕が伸びてきて、何もなかったかのようにまたワキ毛を触りはじめたのです。

(・・・良かった・・・バレてない・・・。)

そう安心しました。
手を払ったとき、僕ははっきりと「それ」の指の感触を感じました。
・・・太くて、ごつくて、重くて、表面は乾いてガサガサとひび割れがありました。
・・・一体いつまで続くのか・・・・、早く消えてくれ・・・・
もう1時間位経ったように長い時間でした。
しかし、いっこうに金縛りが解ける様子はなく、「それ」の腕は乗っかったままで、鼻息もしっかりかかっています.

(もうこのままではラチがあかない!!)

僕はついに解く決心をしました。
失敗は許されない。
まさに決死の決断でした。
じわじわと頭のほうに精神力を充満させていきました。

・・10・・・・・・・・20・・・・・・・・30・・・・・・・・これくらいでいいかと思ってもまだ溜めていきました。

・・・そして、まさに(精神力200%だ!)と思ったとき!!!!

バッ!!と必死に上半身をねじると部屋の空間は一瞬にして雰囲気が変わり、後ろの「それ」もなくなりました・・・・。

(もう安心だ・・・。)

ホっとため息をつき、電気をつけ、時間をチェック。夜中の3時16分でした。
それからすぐ友人に電話をかけたあと、その妖怪を「ワキモゲラ」と名付け、詳細に記録したのですが・・・。

・・・「それは」まだ存在していたのです・・・。

その後、1ヶ月間つきまとわされることになります・・・。
昼、夜問わず、必ず僕が横向きに金縛りにかかった時に背後からモチのようにのっかって来るのです。
なぜか「それ」だとわかるのです。
そのうち無視していましたが、ある休日昼寝をしていたら、金縛りにかかり、いつものように無視して、僕は頭の中で友人たちとの楽しい出来事を思い出して楽しんでいました。
すると頭の中に突然、「それ」の声が響いてきたのです!
「お前はいいよな、友達「うわー!!!」その声の途中でびっくりして金縛りを解きました。
その声の続きは何だったのでしょうか。
だいたい検討はつきそうですが・・・。

(あぁ、やっぱり考えていることわかるんだ・・・・。)

僕はそう思いました。
これを機会に「それ」は現れなくなりました・・・。
妖怪とはイメージ的に「生身の肉体を持っている生物」みたいに考えてしまいますが、なるほど霊的な存在なのでは・・・と考えるようになりました。
それ以来、自ら霊体験をしようと体を受け身にすることはやめました。

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