アパートの不思議

アパートの不思議 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

私が体験したことを書こうかな。

今から6年前。
水商売をしていた私は、その日に限って0時頃帰れた。
風呂に入りたかったけど、面倒になったからいいや寝ちゃえ。と思い、顔だけ洗って布団に入った。

すぐに眠りに落ちて、しばらくすると目が覚めた。
時計を見ると午前2時半ぐらいだった。
もう一度寝よう。と思い、目を閉じて少したつと金縛りに遭った。
私の意識は、まだある。
なんだ?疲れてるのかな・・・
怖い気持ちを紛らわす為、努めて明るく考えた。
その時、私の寝ている部屋の(玄関から見て)手前の部屋の引き戸が開く音がした。
え?誰か入ってきた・・!?

そんなワケないよな、玄関とか開く音してないし・・。
異様な金縛りの中、耳に意識を集中させた。
すると、手前の部屋の畳を歩く音がする。

スッスッスッス

真っ直ぐこちらの部屋に向かっているのが分かった。
え!どうしよ!!
私は金縛りで動けない。しかし意識だけは、ある。
布団の中にいる私の、頭の上はすぐ引き戸だ。
この引き戸も開けられたらヤバくないか?
開くな・・
しかし、引き戸は開けられた。

すーっ。

引き戸を開けてすぐの場所で、私は寝ている。
と言うより引き戸に布団をくっ付けるようにして寝ていた。
私は また、怖い気持ちを紛らわす為にこんな事を考えていた。
戸を開けてこんなにすぐの所で寝てるとは思わなかっただろうな。
しかし ソレは、私の顔を覗き込んでいる。
見たわけではない。気配がある。

物凄い恐怖で、もう他の事なんか考えられなかった。
あーお願い!帰って!向こう行って下さい!
一生懸命、心の中で祈った。
時間にして、どの程度か分からない。
多分1分も経ってないだろう。
それから また、頭上の引き戸がすーっと閉まり、手前の部屋の畳を歩く音がした。
それと同時に金縛りも解けた。

あー・・なに今の?

他の事を考える余裕も出てきた。
でも耳だけは、手前の部屋に集中させていた。
そこで、ふと気付いた。

・・・出てった音しなくないか?

入ってきた時は、手前の部屋の引き戸も開く音したのに。。
ってことは、まだいるって事!?
しかし、私には起きて確かめる勇気はなかった。
やだよ、寝る。
恐怖で凍りつきそうになりながら、私は朝方になってようやく眠れた。

それ以来、私の住むアパートでは不思議な事が次々と起きるようになった。

あの日を境に部屋の物の位置が変わっている。
私は、使った物は元の場所に戻すようにしているのに朝起きると放り出されている。
微妙に違うとかじゃなくて、もう明らかに違う。
気のせいじゃないのは分かってたけど、実際あんまり気にしてなかった。

そんな事が1週間くらい続いたある夜。
コンビニでお菓子とか買ってきて、それをテーブルに置いたまま布団に入った。
ウトウトしてたら、物凄い勢いでビニール袋を漁る音がする。
ゴキブリかと思ったけど、1匹2匹のゴキにあんな音は出せない。
中身を確認してる感じ。
頭上の引き戸を開けてみる勇気はないから、音が止むのを待っていた。
それから引き戸を開けて、異常はないか見たら買ってきたお菓子が袋から出されている。
ゴキにこんな真似はできないし。やっぱり誰かいるんだな・・

なんか急に腹が立ってお菓子は冷蔵庫に入れて、袋はしまってその日は寝た。

別の日。
夜の11時頃、テレビも何も付けない無音の中台所の床を拭いていた。
私の住むアパートは安普請な為、2階への階段を上がると手すり等が揺れて、カシャンカシャンという音がする。
だから誰か上がってきたら分かるし、台所にいたらイヤでも聞こえる。
なのに、玄関前でいきなり女の足音が聞こえた。

コツ、コツ、コツ。

ん?誰か帰ってきたのか?
隣の奥さんが帰ってきたと思ったけど、隣は角部屋でいつもはもう1つの階段を使ってるから、私の部屋の前を通る事はまずない。
私は耳を澄ませていた。隣のうちかな。
が、真っ直ぐ私の部屋の前で足音は止んだ。

は?

思わず鍵がかかっているのを確認した次の瞬間ガチャガチャガチャと凄い力でドアを開けようとしている。

なに!?

ドアを押さえようとか、覗き穴から見てやれとかは一切思いつかなかった。
ただ、ボー然と見てるだけ。
力づくで開けようとしていたが、諦めたのか音は止んだ。
私は、酔っ払った隣の奥さんが部屋を間違えたんだろ。と思ってまた足音を聞いていた。
さっきも書いたように、うちは安普請のアパートだから隣の人がドアを開ける音なんかも聞こえてくる。

じっと耳を澄ませて、隣の家のドアが開く音を待っていた。
でも、何も聞こえてこない。
外へ出てみる気は、さらさら無かった。
考えてみると、階段を上がってきたカシャンカシャンって音はせずいきなり、玄関前でコツコツという足音。
それに、階段を降りていく音もしなかった。

たっぷり5分は経ってから、ドアを開けてみた。
何もないし、変わったところもない。
下まで降りてみたけど、誰もいなかった。

次の日にでも、隣の奥さんに聞きたかったが交流もないし。
今だに謎のまま。

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