左手の腫瘍

左手の腫瘍 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

左手にできた腫瘍、確実な治療法が無いのだが、痛いけど注射治療の方が確実性が高いと医者に言われたので、注射治療をお願いした。
その後、薬が効いている証拠なのか、左手の特に指が真っ赤に腫れてとてつもなく痛い。
寝ていても意識がうつらうつらとあるぐらい痛くて、かれこれ2ヶ月は寝不足、人形にかまうこともなくなった。
昨日、久しぶりに人形を出して、頭を撫でながら事情を話し、謝った。
これからもほとんど一緒に遊べなくなると。

その後、痛みを感じながらうつらうつらと昼寝していたら、金縛りにあった。
体は寝ているけど、痛みで脳が起きている状態だからだろうと思っていたので冷静だったが、左手に何か気配を感じた。
左手に意識を集中したら、ボソボソと声が聞こえる。

「親指治った」「治った」
「治らない」「こっち治らない」
「治らない。まだ?まだ治らない」
「うるさい。まだ治らない」
「もう治せない?」
「うるさい。疲れた」

カタコトでこんな会話をしていた。
さらに意識を集中しようとしたら、

「あ。起きそう」「起きた」
「うるさいから起きた」「うるさい」

と聞こえて、その気配は無くなってしまった。
相変わらず金縛り状態で、動けた時には夜10時を回っていた。
恐る恐る左手の包帯を外してみたら、嘘の様に親指だけが治っていた。
腫れが引いて、黒くなっていた部分が剥がれ、キレイな皮膚ができてきている。

他人からしてみれば、人形を愛でた日と夢と治療の効果が偶然重なっただけかもしれないが、私は人形に御礼言いながら髪をとかしてあげた。
左手がもうちょい自由になったら、新しい服も仕立ててあげたい。

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