クマのぬいぐるみ

クマのぬいぐるみ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

昔、親戚の中に子供心に気味が悪いと思う人がいた。
綺麗な女の人。
でもこの世の人じゃないような、どこか半分あっちの世界にいってるような人だった。
そんなに近い間柄でもないので、数年に一度会うくらいだった。

そんな数年に一度の機会。
多分その人が成人式だったんだと思う。
ウチに晴れ着姿のその人と、その人の親が挨拶に来た。
当時私は十歳とかそのくらいで(区切りの良い年齢)で、お祝いにと、明らかに手作りのクマのぬいぐるみを貰った。
綺麗に縫ってあって既製品じゃないかとも思ったけど、タグもないし、細かいところの感じで手作りだと判るようなもの。
ありがとうとお礼を言って大切にしていた。
今まで不気味だと思っていたのも申し訳なく感じるようになった。

しばらくして、その人が自殺したと私の母に聞いた。
葬式に行って、49日とかもろもろ終わって大分落ち着いたころ、その人に貰ったぬいぐるみが妙な空気を纏うようになった。

どう表現したらいいか分からないんだけど、じめじめじとじとしていて、妙な臭い。
近づいたら寿命が縮むんじゃないかって、恐ろしかったのを覚えている。
でも、故人に貰ったものだし、仕舞い込むのもなんだか申し訳なくて、そのまま本棚の上に飾っていた。

同じ時期、我が家では度々災難が起こるようになった。
祖母が妙に呆けるようになる。
父が事故に遭う。
母がひったくりに遭う。
健康そのものだった兄が、部活中に度々倒れるようになる。
私が原因不明の高熱で寝込む。
覚えてる限りでこれだけだから、もっと何かあったんだと思う。

そんなある日、我が家に空き巣が入った。
家の中はめちゃくちゃ、ソファーとかカーテンとか布製のものは切り裂かれていた。
多分、刃物を持っていたんだろう。
「家の中にいたら危なかったね」と家に入れるようになった後に兄と話しながら、自分達の部屋に行った。
本棚のぬいぐるみも当然のように切られていて、切り裂かれた腹から大量の黒い髪をはみ出させていた。
私と兄は泣きながら両親の元へ。
それからどうなったのかは正直よく覚えていない。
覚えているのは、お寺にお払いに行ったこと(ぬいぐるみだけじゃなく、家族全員)。
そのお姉さんの自殺した原因が、恋愛感情のもつれだと誰かから聞いたこと。
そして、お姉さんの相手の男の人の浮気相手だかの雰囲気が私に似ていること。(年は全く違うけど)
ぬいぐるみから、男の人と浮気相手と私を呪うような文面が出てきたこと。(雰囲気が似ているから憎かったらしい)

お払いをした後、家族にふりかかっていた災難は消えた。
やっぱり、あのぬいぐるみに何かしら憑いていたんだろうなと思う。

今では私は立派に人形者。
ぬいぐるみだって大好きだ。
でも、兄は私の部屋に入ることすら出来ない。
ぬいぐるみが恐ろしいらしい。

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