これは私が都内のK区にいたころ体験した話です。
私の住んでいたマンションから、5分ほど歩いたところにK公園がありました。
普段、親子連れや犬の散歩などで賑わうその公園は、真ん中が道路と川で仕切られていて、その上にはアーチ型の大きな橋が架かっています。
毎晩7時になると、私は公園のジョギングコースを走るのが日課でした。
あの晩もいつものように徐行しながら走り始めました。
そしてあのアーチ型の橋にさしかかったところ、いやに橋の下が明るいのに気付いたのです。
「何…?」
と覗き込む私の目に飛び込んできたのは、青いビニールが被った水死体だったのです。
「うわっ!気持ち悪い!!」
思わず私が後ずさりした直後…
ドスンッ!!!!!!…
と誰か高いところから私の肩にかけて乗っかってきたのです。
あまりの衝撃に地面に手をつくほどでした。
驚いて後ろを振り返りましたが私の背中には誰もいません。
すると歯がガチガチと音をたてるほどの寒気と間接の痛みに襲われ、なぜか涙が止めどもなく流れてきたのです。
そんな私はまわりなど気にする余裕などなく、ヒジやヒザの痛みで足を引きずりながらマンションへ財布を取りに行き、タクシーで救急病院へ向かいました。
病院で熱を測ったところ40度以上もあり、その場で薬を処方してもらい飲んだら、ものの5分と経たないうちにスゥーっと身体が軽くなり熱が下がったのです。
「あれは一体何だったの?」
と首を傾げながら元気に病院を後にしました。
そして翌日…
いつものように時計がわりにつけていたテレビから、私が住んでいるK区のニュースが流れてきました。
それはある息子が母親を殺し、身体を折り曲げて浮かび上がらないように鉄アレーと共にカバンに詰めて川に投げ捨てたという残虐な事件でした。
そう、それはまぎれもなく私が夕べあの橋で見た水死体だったのです。
息子に殺され冷たい川の中に捨てられた悲しみを、誰かに知ってもらいたくてたまたま波長の合う私に乗っかってきたのでしょうか。