小学校の時、家の壁を大きな幼虫の影が這ってた。
何の幼虫か当時の私には分からなかったが、幼い頃の私は昆虫が大好きだったので、あまり気にはしなかった。
その幼虫は影しか見えないにも関わらず、夜中暗い場所でもはっきり見ることができた。
夜、就寝する時、いつも添い寝をしてくれていた父によく
「あの幼虫はどこ?」
と聞いた。
父は
「○○(私の名前)を守りに行ってるんだよ」
と私を寝かしつけた。
幼くも理解していたが、私を守るとはどういうことだろう、と今さらながら思う。
私は体が弱く、この世に生まれてから小学校に入るまで、肺炎や高熱でよく入院することがあった。
気づいた時には家の中は幼虫の影があったが、それからというもの、それまでの入院が嘘のように病気をしなくなった。
小学校高学年頃のある日、下校中に本当に大きい緑の幼虫が道路に転がっているのを見つけた。
家の壁を這っていた幼虫の影にそっくりだった。
いつもの私なら手掴みで家まで持って帰るのだが、その大きな幼虫は素手では触ってはいけないような気がした。
しかし、どうしても持って帰りたかった私は、足で蹴りながら幼虫を家まで運ぼうと考えた。
私は、ゆっくりゆっくり蹴りながら幼虫を転がした。
すると幼虫の色は黒色に変化していった。
死んでしまったのかな?と残念がった私は、目の異変に気付いた。
目に痛みを感じて涙が止まらなかった。
私は黒ずんでしまった幼虫をそっちのけで家に走った。
家に帰った頃には私の目は腫れ上がり、見えなくなっていた。
病院には行かず、家にあったお薬を塗ってその日は過ごした。
次の日には腫れは引いたが、明らかに私の目は視力が低下していた。
その日を機に、家を這っていた幼虫の影はなくなり、中学校に入るまで、たびたび目の痛みや耳の腫れ等に悩まされた。
今は、あの影は私を守ってくれていた神様だったのかな、と思っています。
ちょっと地味ですけど、私の幼少期の不思議な体験でした。
両親は幼虫の影ことを覚えていません。
一緒に話しかけたりもしたのに。