これはある方が体験した話です。
そのある方の名前を借りにAさんとして話します。
Aさんは仕事の関係上夜遅くまで起きて仕事をしている事が多かったそうです。
そしていつものように深夜まで仕事をしていると、マンションの階段をバタバタ音を立てて上がりながら来る人が居たそうです。
丁度Aさんの仕事部屋はマンションの廊下と階段の近くに面しており、普段からマンションに住む住人が話す声や、歩く音が聞こえていたそうです。
「うるせぇな、何だこんな時間に」
Aさんは苛立ちながらも、その物音の事など気にせず仕事に没頭していたそうです。
それからAさんは、仕事の関係で遅くなり帰宅が夜三時を過ぎたそうです。
疲れた体を引きずりながら、エレベーターのボタンを押したそうです。
ガタガタという音と共にエレベーターが降りてきました。
「よし、やっと来たかおせぇよ」と言いながら乗ろうとしたその時、Aさんは思わず「あっ」という声を出してしまったそうです。
エレベーターの中にはAさんに背を向けた形で、中年の男性と見られる人間が立っていたそうです。
Aさんは明らかに、「それ」が異様な雰囲気を、かもちだしているのを感じ走りながら七階まで上がったそうです。
バタバタバタバタと音を立てて。
急いで部屋に入り鍵を閉めた瞬間、
「はぁ……はっ、そういう事か、エレベーターを使わず、階段を上がって来たのも、みんな「それ」を見たからなのか」
Aさんはそれ以来エレベーターを使うのを躊躇するようになったそうです。