ついてくる同僚

ついてくる同僚 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは20代前半の頃に、地方の小さな営業所でOLをやっていた時の話。

私はひとり旅が趣味で、GWやお盆の他に、年に1度は有休を使って平日に旅行していた。
職場の人に「今度はどこ行くの?」とよく聞かれたけれど、「ナイショ!おみやげ楽しみにしててね~」と言っていた。

それは別に何かを警戒しているとかではなくて、行き先を言うと行ったことのある人が「あそこがいい」、「ここがいい」、「あそこは見ておけ」と、やたらアドバイスしてくるのが鬱陶しかったから。

そんなある時の旅行当日。
車で東北自動車道を走っていると事故渋滞に巻き込まれてしまい、停車している間「まいったな~」と思いながら周りをキョロキョロしていた。

そして何気にルームミラーから視界に入ったのが、左の車線の2台後ろの運転席。
その時はハッキリとした確信があったわけではなかったけれど、同僚男性にすごく似ていた。
その人、上手く言えないけれど独特の雰囲気を持った人で(よくない意味で)、髪型も癖毛でちょっと変わっていたので目についた。

その後、事故処理が終って走り出した後も、なんとなく気になって注意していたけれど、一定の距離を保って付いてくる。

最初は「自意識過剰だよね・・・」と思っていたけれど、やっぱり気持ち悪くてSAに入ってみたら、その車もSAに入ってきて、私とはかなり離れたところに車を止めた。

トイレへ行く時に、目だけを動かしてその車から人が出るのを見ていたけれど、一向に出てくる気配がなく、トイレの後に車へ戻る時も同じように確認してみたけれど、運転席から出てくる気配がない。

私は「なんとかあの車を巻かないと・・・」と思いつつ、どうしていいか分からなかった。
ようやく考えた作戦が、車を発進させたらその車も発進したので、SAの出口付近で一旦路肩に止めて荷物を確認するフリをしたら、その車は止められずにSAを出て行った。

その時にも目だけを動かして確認してみると、やっぱりその同僚男性に見えた。
「何だったんだろう?」と思いつつ、10分ぐらい時間を置いてから私はSAから出た。

しかし、「やれやれ・・・」と思っていたところ、それから1時間ぐらい走った頃にまた後ろにヤツが付いていた。

私はもうブルブルと震えが止まらなくなった。
怖くて気持ち悪くて・・・。

仕方なく少し危ないけれど、予定外のインター出口のところでギリギリまで走行車線を走ってからハンドル切り、高速を降りた。

その車はそのまま走って行った。

私は有休を3日間取っていて、2ヶ所のホテルを予約していたけれど、1ヶ所目はキャンセルして2ヶ所目の目的地へ行くことにした。
また高速に乗ると、見つかるような気がして怖かったから。

地図を広げて、もし次のインターでヤツが降りて探したりしたとしても、避けれそうなルートを走った。
けれど、その時はもう旅行どころではなくて、そのまま帰ってくればよかった・・・。

有休期間が終って出社し、ヤツの勤務表を確認してみると、同じ期間に忌引休暇を取っていた。
総勢6人の小さな営業所だったし、女は私一人だったので、誰かに相談すべきかどうか迷ったけれど、所長のことは信頼していたので思い切ってあったことをそのまま相談した。

もちろん目視だけで確証はないので、「今の時点ではどうしようもないが、結婚前のお嬢さんに何かあったらいけないから気をつけておく」と言ってくれて、翌年に退職するまで出来るだけ二人にならないように配慮してくれた。
忘年会や歓送会での帰りなどでは、所長がサッとタクシーを捕まえて帰してくれていた。

それから6~7年ほど経った頃、その元同僚のヤツは家宅侵入と強姦で逮捕された。
その時にはもう会社からもリストラされていたけれど、ヤツの逮捕の話を聞いた時には血の気が引いた。

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