その日、女子大生のA子さんがB子先輩の部屋で、サークルのみんなとお酒を飲んでいた。
お酒を飲むと自然と会話が弾み、非常に盛り上がった。
しばらく経つと、先輩がこう切り出した。
「今日はそろそろお開きにしましょう。私、眠くなってきちゃった・・・」
先輩はかなり酔っているようで、フラフラして今にもダウン寸前。
メンバーは先輩をベッドに寝かせ、電気を消して部屋をあとにした。
部屋を出てしばらく歩いていると、A子さんは先輩の部屋に自分の携帯電話を忘れていたことに気が付く。
A子さんは急いで携帯を取りに、B子先輩の部屋に戻った。
部屋の電気は消えたままだった。
B子先輩が起きて鍵をかけた様子もなく、ドアはあっさりと開いた。
「A子です・・・。さっき忘れた携帯を取りに来ました・・・」
一応挨拶をしたが、返事はない。
真っ暗な部屋で先輩はぐっすり眠っているようだ。
A子は電気を点けるのは悪い気がしたので、手探りで携帯を探し出すと、
「携帯が見つかりましたので失礼します・・・」
と言うと、自宅へと帰った。
翌日、学校へ行く途中にB子先輩のアパートの前を通ると、そこには沢山のパトカーが止まり、進入禁止のロープが張られ、警察官でごった返えしていた。
何事かと思い、A子は警察官に事情を話すと、B子先輩の部屋の中へと通された。
そこは血が飛び散り、部屋は荒らされていた。
特にB子先輩が寝ていたベッドは凄まじく、大きな血溜りが出来ていた。
「被害者は寝ているところを変質者に襲われて殺されたのでしょう」
警察官はそう説明した。
A子は、もし携帯を取りに来た時間がずれていたら、間違いなく自分も被害に遭っていたかも知れない・・・
と思い、凍りついた。
震えるA子に警官は、
「ちょっと分からないものがあるのですが、これに何か心当たりはありませんか?」
と言って、壁を指差した。
そこには、B子先輩の血で書いたと思われる赤い文字。
「でんきをつけなくてよかったな」
と書かれていた。
そう、A子が携帯を取りに来た時、先輩はすでに殺されており、変質者がまだ部屋の中に潜んでいたのだ。
もしも、携帯を探すために電気を点けていたら、自分もきっと・・・