場所は某大学病院。
救急車で搬送され目しかまともじゃなかった。到着して看護婦が
「帰れ。この野郎が」
確かに担架にいる自分に言った。同伴した姉を掴んで「連れて帰って」と一言。
先生たちが四人くらい来て「うわあー。こりゃ酷い。輸血だな」とか
そう言い出したら「ずっと呼吸が苦しそうなんです」と態度が豹変。
病棟で個室に入れられて輸血されるとき若い医者の兄ちゃんたちが入ってきて、鼻歌や
雑談し始めた。
「まじ、受けない?」
「ちょっとー、どうやってやるんだっけ」
浮かれてるようだった。
腕をつねられたんだが、医者がそんなことするわけないと思った。
更にもう一人が自分の爪をはじいたり、剥がそうとしたりした。
本当に焦った。顔を何人かで覗いたり、髪をなぜなぜしたり、手をにぎにぎされた。
腕や手首が気に入ったらしく「あー、細い細い」と力をこめてにぎられた。
いつの間にか輸血されてたんだけど、連中のうち一人だけが残った。
何にも言わないで顔をずっと見てた。恐くなりこっちから話し掛けてみた。
「あのー、ここは随分お医者さんがいるんですね」
無視。きっと聞こえなかったんだと思いさらに大きな声で言ってみた。
完全に無視。そのうち疲れて寝てしまった。
後日、その連中から挨拶があった。とても真面目そうでふざけたりする人間ではない感じがした。
幻覚だったのかと自分は悩んだよ。
顔を覗き込んで無視していたA先生がそのあとニコニコした態度だから更に混乱した。
きっと被害妄想だと思った。
何週間か後、どうしてもとらなきゃいけない臓器があって外科に転科した。
最初にいたのが内科でA先生も内科医。
とてもいい人らしく、毎日朝晩外科にまできてくれた。
明るくてみんなから好かれているようだった。
また内科の病棟に戻れと言われ戻ったんだけど、姉が担当医を変えてほしいと言う。
A先生はいいひとだと思い込んでいたので反対した。
何ヶ月か経ったある日、正月になったので病棟の患者は帰って無人に近かった。
「君は帰れないし、外出させないよ」
そうA先生から言われたので従った。
大晦日、どうにも手術したお腹が痛くなってしまい、ナースコールを何度も鳴らした。
A先生が来た。
「鳴らし方が悪いんじゃない」
いきなり寝たきりの自分の上にA先生が落ちてきた。
手術後の場所に膝をたてられびびった。
暴れたので点滴が抜けて大量に出血。
先生がナースコールを鳴らした。同僚のB先生が来て点滴をさしなおすことに。
今までにありえないくらいの激痛に腕をぶん回した。さらにベッドは血だらけ。
首をひねったら病室の入り口には姉と看護婦がいた。
先生たちはそれに気がつき「カンファレンスだから、またあとで点滴ね」
そう言い立ちさられた。
パジャマやベッドは血だらけだったし、切った腹の傷口はじくじくしてきた。
姉は「頭おかしいよ。絶対あいつら変だよ」とわめきだした。
看護士は無言でシーツを変えてくれた。
姉は病院にクレームを入れると騒いだが自分は反対した。あんなに良くしてくれたA先生がおかしいはずがない。
なんかの間違いじゃないかと言い返した。
「じゃあ、なんであんたの腹に膝蹴りするのよ」
返す言葉がなかった。
A先生が自分にそんなことするもんかという思いと実際にやられた恐怖がごちゃごちゃになってしまい胃潰瘍になった。
クレームは入れず、春には退院した。
姉が妄想しておかしいのか、自分がやられたことはなんだったのか、A先生がおかしいのか、なんなのか、今更になって恐い話です。
退院してからけっこう恐くなった。
長文、誤字脱字すまん。
あんま、恐くないな。