[ナナシ 第1話]懺悔(始めに)

懺悔(始めに)[ナナシ 第1話] 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

あれからどのくらい経つだろう。
失って初めて気付くことがあると、身を持って知ったあの幼かった頃から、随分時間が経った。
知りたくなかった。
そんなことは、知らないまま大人になりたかった。
怖かったことも、悲しかったことも、いっしょにいたことすべて、思い出にしてしまいたかった。
「ああ、こんなこともあったね」なんて笑って話せるような、楽しい思い出にしておきたかった。

でも、
それは永久に叶わなくなった。

僕があの時気付いていれば、きみが怯えていたことに気付いていれば、せめてあのとき、僕がきみから逃げ出さなければ。
こんな未来はなかったのかも知れない。
僕たちは今も、いっしょに笑っていたのかも知れない。

すべては、後の祭り。

これから僕が書くものは、かつての僕と、僕の親友の話である。
そして、その親友への懺悔の物語である。

ごめんね。ごめん。ごめんなさい。
なにもしてあげられなくて、なにも気付かなくて、いつもきみに甘えていて、ごめんなさい。

ちゃんと覚えてるよ。
絶対忘れないよ。
今も、これからも、生まれかわっても。

絶対わすれないから。
そしてもし、また逢えたら今度こそ、あのときできなかったことを、するから。

だからこれからも、きみを親友だと、呼ばせてほしい。

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