知り合いの不動産業者に聞いた話。
伊集院が部屋を探す時だったか、そのテの話を仕入れようと水を向けてみたそうで。
やはりブラックリストを作成しているらしい。
曰く付きの物件の。
キツいのは業者でなすりあいになるんだったか、その回避の為のブラックリストだったかで(ここ空憶え)、
そのうち一つの話。
階段数から考えて確か2階にある物件が回ってきた。
情報ほぼなし。
黒リスト系を扱ったことは以前にもあったから、ある程度覚悟はしていたそうだが。
そこに入ってくる人がことごとく短期間で出ていってしまう。
バラつきはあるものの、全て2週間以内には出ていっている。
そんなことが続くと周囲にも噂が立ってくる。
やっぱりなんかあるな、あの部屋。
そういう事態は業者にとっては堪らん、というわけで、きちんと説明をして、了承をとってから入居してもらうことにした。
家賃も相当下げて。人入らない部屋を余らせてもしょうがない。
一回悪い噂も妙な記録も止めておけ、と。
業者「入る人みんな出ていっちゃうんですよ、理由の方は調べてるんですが、まだちょっと」
客「ああいいですよ。そういうの、霊感とかないですから」
それでも出ていく。
理由を探るにも、入居者は実家あたりに戻って連絡が取れなくなる。
電話かけても家族は出るが、本人は出してくれない。
本人の代わりに謝るだけ。
しょうがないので業者の一人を泊めてみることにした。
まず現象をはっきりさせなくては。
当然そんな物件、仕事でも嫌がられる。
客入れるならともかく自分はまっぴら。
まぁ人情。
それでも適任の怖いもの知らずが見つかって、まずは2週間かもうちょいの予定。
理由を判明させるまで入ることになった。
2週間過ぎたあたりで、その業者が死んだ。
部屋の中で発見された。
そうなるともう悠長なハナシじゃなくなる。
悠長ではなかったかも知れんが、変死だから警察が入る。
今までヌルい調査しかできなかったのが、お上の聞き込みになると流石に今までの経緯が見えてきた。
今までの入居者全員、話は一致していた。
夜中に声が聞こえる。
ちっちゃい子供の声。
「いちだんのぼってうれしいな」
それが入居初日。
「にだんのぼってうれしいな」
二日目。大体その辺りで逃げ出す人が大半。
説明受けた人も、まぁ大差なし。
2週間以内には出ていく。
遅まきながら原因・大元の出来事が判明する。
その部屋の中で何かが起こったわけじゃなかった。だから掴み辛かった。
物件たらいまわしの間に紛れていったのか。
1階の子供だった。歳は3つだか4つだか(空憶え)。
行動範囲が広がってどんどんやんちゃになって、階段を上れるようになった。だから上った。
母親の目が逸れた隙。
踊り場を回って、2階までの13段。
そこまで上って、手すりの向こうにいつもと違う景色。落ちた。
打ち所次第ではあっけないものらしいですね。まして子供では。
問題の物件というのは、その階段を上ってすぐの部屋だったそうで。
毎晩一段づつ上ってくる。
毎晩一段づつ近づいてくる。
「ななだんのぼってうれしいな」
踊り場は過ぎた。
「じゅうだんのぼってうれしいな」
大口叩いた人も耐えられなくなる
。
階段は13段。一番耐えた人も14日目、おしまいの前の日に。
「うえまできちゃったうれしいな」
次は?今扉の前ってことだよね?
そりゃ誰でも逃げだすわ。逃げなかった業者が、死んだ。