これも出版物からの引用ですが…。
うろ覚えなので多少本物の話と違ってるところもあるかもしれませんが勘弁してください。
その日、残業を終えて私が会社から帰ってきたのは真夜中だった。
タクシーを降りてオートロックの玄関を入りエレベーターのボタンを押したとき、外の非常階段を誰かが下りてくる足音が聞こえた。
「おかしいな?」
普通なら例え2階に住んでいる人でも、わざわざ非常階段など使わずにエレベーターを使うものだ。
どことなく違和感を感じた。
しかしあまり深く考えずに、やってきたエレベーターに乗ろうとした。
扉が開くと中には一人、女の人がすでに乗っていた。
『上から乗ってきてここ(1階)で降りるのかな』
と思ったが降りる様子が無い。
『じゃあ地下の駐車場から乗ってきた人なんだろう』
と思ったが、なんとなく奇妙なのだ。
彼女はさっきからずっと入り口に背を向けて壁がわを向いたままなのだ。
気味が悪いなと思ったがそのまま自分の住む5階のボタンを押した。
私たちを乗せたエレベーターは5階に到着した。
私は逃げるようにエレベーターを降り、部屋に入ってカギをかけ、すぐに風呂に入った。
風呂から上がって、いつもの習慣でビールを飲もうと冷蔵庫を開けた。
ところが運悪くビールを切らしていたようだ。
今夜はビールはあきらめようとも思ったが、私にとって風呂上りのビールは欠かせないものであるし、ここから歩いてすぐのところにコンビニがあるので面倒だが買いに行くことにした。
適当に服を着て出て、エレベーターのボタンを押した。
すぐに扉が開いたので乗り込もうとした私は凍りついた。
さっきの女の人がさっきと同じ姿勢で同じ所に立っていたのだ。
さすがにもう乗れない。
そう思った私はあわててエレベーターから離れ、廊下の突き当たりの非常階段の扉へと向かった。
非常階段を降りる自分の足音をききつつ、さっき聞いた足音の主も私と同じ女を見たからエレベーターに乗ることができなかったんだろうと納得した。
という話でした。
あまり落ちらしい落ちも無いですが、なんとなく怖い話だったので。