あれからどのくらい経つだろう。
失って初めて気付くことがあると、身を持って知ったあの幼かった頃から、随分時間が経った。
知りたくなかった。
そんなことは、知らないまま大人になりたかった。
怖かったことも、悲しかったことも、いっしょにいたことすべて、思い出にしてしまいたかった。
「ああ、こんなこともあったね」なんて笑って話せるような、楽しい思い出にしておきたかった。
でも、
それは永久に叶わなくなった。
僕があの時気付いていれば、きみが怯えていたことに気付いていれば、せめてあのとき、僕がきみから逃げ出さなければ。
こんな未来はなかったのかも知れない。
僕たちは今も、いっしょに笑っていたのかも知れない。
すべては、後の祭り。
これから僕が書くものは、かつての僕と、僕の親友の話である。
そして、その親友への懺悔の物語である。
ごめんね。ごめん。ごめんなさい。
なにもしてあげられなくて、なにも気付かなくて、いつもきみに甘えていて、ごめんなさい。
ちゃんと覚えてるよ。
絶対忘れないよ。
今も、これからも、生まれかわっても。
絶対わすれないから。
そしてもし、また逢えたら今度こそ、あのときできなかったことを、するから。
だからこれからも、きみを親友だと、呼ばせてほしい。