これは夜遅くの帰宅中のこと
その人は暗い中を早足に歩いていたのだが、途中いくつかの街灯の下を通るたびに光の中に足だけ覗かせている何かがいるのを見た。
どれも足を覗かせているだけ。
人かと思い、ちらりと目をやったがその姿は捉えられなかった。
その足は黒かった。
だんだんと自分の部屋がある団地に近付きつつあった。
それにつれて誰かにつけられている感覚がして、振り向くと人がいた。
それは黒くて男女の区別も付かない。
だがつけているというより距離を置いてこちらを監視しているように見えた。
気味が悪くなり、団地の入り口に着くとなるべく急いで階段を上った。
その間もつけられている感覚はあったままだった。
自分の部屋のある階についてちょうど廊下の真ん中の自分の部屋に着いたとき、ダダダダダッ、と誰かが上の廊下を走る音がした。
それにびっくりして、音が過ぎた後で息をつき前を向いた。
すると
確かにあの黒いものが何人も何人も何人も奥の踊り場に立っていた。
ハッとして振り向くと自分の来た方にも同じものが何人も何人も何人も立っていた。
くぅぅぅっ、と心臓が縮むような感覚が走った瞬間、黒いものが一斉に近付いてきた。
急いで自宅の鍵を開けたその人は右も左も向かないように部屋に飛び込み、急いで鍵をかけて電気をつけ、ドアから離れた・・・・・・・・・
そのあと、何か起きたわけではないが、いつ自分が寝たのかも思い出せなかった。