あれは何だったんだろう。ってお話。
僕のかよっていた中学はお寺の近くにあり、3階の教室からは道路を挟んだ向こう側にそのお寺のお墓が見えた。
近所では幽霊がでるとかいう噂もあったがそんなことは僕は信じていなかった。
これはある日の事。
僕は授業がおわり掃除当番の三階の美術室へ向かった。
掃除当番といっても実際には箒を振り回して遊ぶだけなんだけど、でも、担当のS先生がいる時くらいはしっかりとやっているふりはしていた。
美術室に入るとすでに班の奴らが三人、箒をバットにして野球をしていた。
僕はその遊びが割と好きで、僕もいれてくれよと掃除用具いれから箒を取り出しバッターボックスに入る。
バッターボックスっていっても実際にはないんだけどね。
ピッチャー役の奴か雑巾で作ったボールを大袈裟なフォームで投げる。
僕はそれをこれまた大袈裟なフォームで打ち返す。
「おっしゃーっ」
思った以上にジャストミートしてボールは窓から出て行ってしまった。
「お前なにしてんだよ」
とピッチャー役の奴が笑いながら言った。
「いいじゃんいいじゃん、また雑巾で作れば」
と僕はいいながらとりあえずボールの行方を窓から体を乗り出して見てみた。
雑巾ボールは自転車置き場を超えて道路の真ん中に落ちていた。
あーあ、これは拾うのめんどいなとか思いながら視線を少しあげるとお墓の中にたっている電柱に奇妙なものを見つけた。
なんか人型で毛むくじゃらだった。
でも、ひょろひょろしていて全体はよく見えない。
それが電柱からぶら下がっていた。
「あっあれサルじゃね??」
僕は叫んだ。
毛が生えた人型のものだからそう言った。
どれどれ?と他の三人も駆け寄ってきた。
「あれだよあれ!電柱のとこの!ほら動いた。」
他の三人はどうも見つけられないらしく、僕がいくら説明しても見つけてくれない。
「あれだよ!」
と指を指した瞬間、それはこちらを振り返った。
S先生の顔だった。
その人型のもじゃもじゃはS先生の顔をしていたのだった。
ただ、その顔は青白く目のところは暗くくぼんでいた。
なんか、顔を無理やりひっぺがして貼り付けたようなダルダルの顔がそこにはあった。
「えっ、あっ」
僕は、声にならない声がでた。
そんなことをしているうちにそいつは消えていなくなっていた。
一度も目を離した覚えはないのに。
その日の夜の事だった。
S先生が亡くなったと連絡が入ったのは。
僕は一応、学級委員長の代理としてそのお葬式に参加をした。
まぁ式は何にもなく終わったんだけど、気になることが一つだけあった。
普通、お葬式って棺から死んだ人の顔を見れるようになってるはずなんだけど、一度も見せてもらえなかったんだ。
S先生の顔を