祖母が94際の時、かかりつけの医者の誤診で大手術を余儀なくされ、別の病院へ運ばれた時のこと。
父も担当医から、高齢を理由に覚悟をするように言われた。
手術は成功したけど、祖母は2週間ほど意識がなく、もうこのまま目が覚めないのでは・・と、身内が泊まりこんでいた。
そんな頃、いつものお坊さんが、祖父の月命日でお経をあげる為に家に来るなり、
「門の所に行者様がいらっしゃいませんが、何かありましたか?」と。
母が祖母の手術の事を伝えると、
「ああ、なるほど。今、行者様はお婆様について行かれてますね。
退院して行者様が帰って来られたら、表門ではなく裏に、蛇に姿を変えて戻られますので、お酒・玉子・塩を、毎月○日に供えて下さいね」と言った。
数日後、目が覚めた祖母に、いきなり「誰がお経を詠んでるの?」と深夜病室で言われた私は、チビリそうになり、「こんな夜中に誰も詠まないよ」と答えると、「そんなはずはないよ。聞いた事もないぐらい優しい声で、誰かが詠んでる」と言って眠りに落ちた。
しばらくして担当医が、一回も痛みを訴えない祖母に「どこも痛くないんですか?」と聞くと、「痛みを感じそうになると、すうっと眠くなって、私は竹やぶの中にいるの。
竹やぶの奥座敷から、いい香りのお線香の香りがして、子供の頃に歌った童話や軍歌、いつもご先祖様にあげてるお経が、なんとも言えない優しい声で聞こえてくる。
それに聞きほれていただけで、痛みを感じた事は一回もないよ」
と言って、一ヶ月後ありえない回復力で退院した。
祖母は先祖供養も欠かさない人だったよ。
この夏に、ご先祖様のところへ眠るようにいっちゃたけどね。
98歳でした。