自転車知り合いの体験談。
知り合いの彼をA、彼の友人をBとする。
二人が幼稚園の頃、Bの自宅のガレージで遊んでいた。
後輪が浮くタイプのスタンドが付いた自転車で、スタンドを立てたまま、ひたすら漕ぎまくるという遊びだ。
やったことある人も多いと思う。
最初のうちは面白がってやっていたが、次第にAは飽きてきた。
そこで、イタズラを思いついた。
スタンドが外れないようロックする部分を、Bが必死に漕いでいる間に外したのだ。
気づかずにしばらく漕いでいたBだが、何かの弾みでスタンドが上がってしまった。
全速力で漕いでいた自転車は、そのまま道へ飛び出した。
Aが声をあげる間もなかった。
運悪くBの乗った自転車は、ちょうど車が走ってきたところに衝突。
Bは即死だった。
Aはまさか自分のイタズラがそんな惨事を招くとは思っておらず、言い出せないまま時間が流れた。
幼稚園児だった彼は、成長するにしたがって記憶も罪の意識も薄れていった。
そして、Aが20歳になった大学生の時。
学校の帰り、駐輪場で自分の自転車を見つけ、さあ帰ろうと思った時に、ふと違和感を感じた。
スタンドのロックが外れている。
たまたま自分がロックし忘れただけだろう・・・そう思い、Aはさして気にせず帰宅した。
しかし、次の日も、スタンドのロックが外れていた。
しかも気づいた。
Aの自転車はスタンドを立てると自動的にロックのかかるタイプで、スタンドだけ立ててロックを忘れることはありえなかった。
Bのことを久々に思い出した。
少し気味は悪かったが、気にしないことにした。
それからは毎日のようにロックが外されていた。
Bの霊なのか・・・どうしたらいいんだ・・・そんな折、Aは近所のドラッグストアで偶然にBの母に会った。
ずいぶん久々だった。
二人はしばらく雑談を交わした。
ふいにBの母は言った。
「そうそう、自転車のスタンドは気をつけてね。今さらだけど」
Aは答えた。
「大丈夫ですよ、俺のはスタンド立てたらロックも同時にかかるタイプだから」
Bの母は言った。
「あの子のも、そうだったのよ」