いつも屋上で一緒に昼飯を食ってる友達が、授業の延長か何かで、いつもより遅れた。
屋上にはオレと、もう一人、携帯で話してる女子だけ。
上履きが緑色ってことは、オレより2つ上だ。
どことなくノーブルな感じの背の高い子で、ぶっちゃけ凄い好みだった。
じっと見るのも何なので、こっちも携帯をいじるフリをしながら、チラチラと横目で見ていた。
するとそこへ、本当に友人からのメールが来てしまった。
『今日、○○(俺)ん所で食お』
仕方なく返そうとして、暫くその女子から目線が外れた。
「なあ、見て、○○くん」
・・・ん?オレの名前?
振り向くと、さっきの女子がじっとこちらを見ていた。
・・・金網を登りながら。
「ちょ、な、何してんねん!」
駆け寄ろうとした瞬間、彼女は金網の一番上から、つるんと身を投げ出した。
前回りの様に。
何がなんだか分からなくなって、足が動かないまま、開きっぱなしの口を閉じることも出来なかった。
一拍の後、「人、とにかく人を呼ばんと!」そう思って入り口の方に向き直った時。
「なあ、見て」
はっきり聞こえる、女の声。
「なあ、○○、なあ」
「なあ、○○、見て」
「なあ、○○、なあ、見て」
「なあ、なあ、見て、なあ、な・・・」
ガチャ、目の前のドアが開き、向こうから女子の4人組が現れた。
立ち尽くしているオレを見て、微妙な顔をしていたが、オレの横をすれ違うと、そのまま皆で座って喋り始めた。
足がガクガクしてるのを必死で隠して教室に戻ると、友達はもう前で待っていた。
震えを我慢した腕で弁当を無言で渡すと、窓からそっと下を見てみた。
何もない。
そのまま正面を向いた。
目は合わなかった。
しかし、足は見えてしまった。
緑色の上履き・・・